農業環境技術研究所 > 刊行物 > 研究成果情報 > 平成20年度(第25集)

普及に移しうる成果 3

植物の葉から採れたカビが生分解性プラスチックを強力に分解

[要約]
イネ科作物の葉の表面などに生息するカビ(糸状菌)が生分解性プラスチック(生プラ)を効率よく分解することを明らかにしました。今回選抜されたカビは、生プラ分解能力が高く、その特性を生かした技術開発が期待されます。
[背景と目的]
プラスチック廃棄物の回収と処理の手間を減らすために、農業用資材などに生プラの導入が進められていますが、生産現場では使用後の分解が遅いなど問題があり、生プラ資材の分解を促進する技術の開発が農業現場から求められています。そこで、植物の葉の表面が生プラの構造と似た物質で覆われていることに着目し探索したところ、葉の表面から生プラ分解能が極めて高いカビを発見しました。
[成果の内容]
  1. 植物の葉面から強力な生プラ分解能を持つカビを分離できました。分離方法は、まず生プラの成分を唯一の炭素源として加えた培地を作製します。次に、その培地上に葉を洗浄した液を流し、乳白色の培地を溶かして透明となった部分の菌株を分離します(図1)。この結果、イネ科作物の葉から生プラを分解する様々なカビが選抜されました。
  2. それらの中から、特に強力な生プラ分解能を持つカビ(菌株名;47-9株)を見出しました。このカビは、生プラフィルム(PBS:ポリブチレンサクシネートとPBSA:ポリブチレンサクシネート/アジペート)を強力に分解しました(図2)。このカビは、今まで見つかった生プラ分解微生物の中でも特に分機能が高く、培養液中に高純度で、生プラ分解酵素のみを生産する優れた特性を持っています。
  3. この菌の酵素液を市販の培養土の上に敷いた生プラフィルム(PBSA)に散布処理すると、処理後6日間で全体の91.2%(重量換算)が分解されました(図3)。この菌や酵素を利用することで、使用済み生プラ製品の分解を促進する新しい技術開発につながることが期待されます。具体的には、環境の制御された施設栽培におけるマルチフイルムを剥がさずに、菌や酵素処理で分解する技術の開発に取り組みます。

リサーチプロジェクト名:情報化学物質生態機能リサーチプロジェクト
研究担当者:生物生態機能研究領域 小板橋基夫、北本宏子、藤井毅、對馬誠也、生物多様性研究領域 鈴木健
発表論文等:小板橋ら、特願2008-250869 号(2008)

図表


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