開催趣旨:
最近、環境保全や農産物の安全と安心に対する関心が高まっている。このため、農業生態系に負荷を与える除草剤、殺虫剤、殺菌剤、化学肥料等の合成化学資材の使用低減に向けて、生物機能の活用など新たな技術開発が求められている。
本来、植物にはみずから化学物質を産生し、病害虫や雑草に抵抗性を示すものがある。また、昆虫や微生物にも、固有の機能として化学物質を介した生物間の相互作用がある。こうした生物間相互作用は、たとえば、植物の他感作用、昆虫や微生物の化学交信、共生、拮抗作用としてよく知られている。生物みずからが産出する化学物質の作用機構は、これまで知られている農薬と異なるものも発見されているが、生物間の相互作用における化学物質の役割については未知な点が多い。
しかしながら、近年の分析機器の発達によって超微量化学物質を単離同定することが可能となり、さらに、遺伝子に関する知見も集積され、シロイヌナズナ、水稲、マメ科植物などでゲノム構造の解析が大きく進んできた。したがって、今後は、このような高度な分析技術や分子生物学の手法を取り入れた生物間相互作用に関与する物質の構造と機能の解明が、農業分野において益々期待されている。
本シンポジウムでは、こうした生物機能に関する最新の研究の現状を紹介し、その機能を活用した環境負荷の低減による農業生態系の健全な管理について広範な論議を行う。
開催日時: 平成16年12月10日(金) 午前10時から午後5時まで
開催場所: 農業環境技術研究所(2階大会議室)
プログラム
10:00 - 10:10 開会あいさつ
陽 捷行 (農業環境技術研究所 理事長)
10:10 - 11:10 [基調講演] 植物由来の天然生理活性物質の発見とその機能および将来展望
吉原照彦 (北海道大学)
11:10 - 11:50 アレロパシーの強い植物の探索と農業への利用
藤井義晴 (農業環境技術研究所 生物環境安全部)
11:50 - 13:00 (昼食)
13:00 - 13:40 促進的アレロパシー物質レピジモイドの構造,機能及び農業への応用
長谷川宏司 (筑波大学)
13:40 - 14:20 昆虫のフェロモンと利用
杉江 元 (農業環境技術研究所 生物環境安全部)
14:20 - 15:00 昆虫行動の生物検定法 − オルファクトメーターから仮想誘引源まで
佐久間正幸 (京都大学)
15:00 - 15:20 (休憩)
15:20 - 16:00 Bacillus 属細菌が分泌する抗菌成分による炭疽病菌の生育抑制作用
吉田重信 (農業環境技術研究所 農業環境インベントリーセンター)
16:00 - 16:40 レタス腐敗病細菌( Pseudomonas cichorii )が産生する毒素と植物への作用
白川 隆 (野菜茶業研究所 葉根菜研究部)
16:40 - 17:00 総合討議
参加申込み:
本シンポジウムに参加希望の方は、メールまたは下記の申込用紙に必要事項(氏名、所属、連絡先、懇親会参加希望等)をご記入の上、FAXで11月20日(必着)までお送り下さい。会場の都合により、申込みは先着200名で締切らせていただきます。
なお、シンポジウムへの参加費は無料です。
問い合わせ先:
305-8604 茨城県つくば市観音台3-1-3
独立行政法人 農業環境技術研究所
生物環境安全部 植生研究グループ長 小川恭男
FAX: 029-838-8199, TEL: 029-838-8243
E-mail: ogaway@affrc.go.jp