用語集

放射能汚染と農業に係わる専門用語を解説しています。次の索引から検索できます。

外部被ばく(がいぶひばく)
体外に存在する放射性物質から放射線を受けて被ばくすること。農作業に伴い、農地土壌や果樹に付着した放射性物質から放射線を受けて被ばくする。
ガスフローカウンター
ガスフローカウンター
土壌や食品に含まれるセシウムやストロンチウムからのベータ線を測定する計測器。ガスフロー計数管内に置かれた試料が、同じ管内を流れるPRガスと呼ばれる混合ガス(アルゴン90%、メタン10%など)を電離させ、発生する電気信号を計測することによりベータ線を測定する。
ガラスバッジ
外部被ばくによる個人の積算線量を測定する小型の線量計。銀イオンが含まれる銀活性リン酸塩ガラスという種類のガラスが用いられ、放射線を受けた後に紫外線が当てられると発光する性質を持つ。この発光量が吸収線量に比例することを測定に利用している。
カリウム40
土壌などに含まれているカリウムの同位体で、半減期は13億年。天然の放射性物質で、自然に存在するカリウムの中に0.0117%の割合で含まれる。カリウムは農作物にとって重要な栄養素であるだけでなく、人間にとっても必須元素であるため、放射性カリウムは常に人間の体内に存在している。
仮置き場
仮置き場(かりおきば)
除染で生じた土壌などの廃棄物を一時的に保管する場所。市町村ごと、地域のコミュニティーごとに設けられ、3年程度保管された後、中間貯蔵施設に運搬される。
乾性沈着(かんせいちんちゃく)
放射性物質などが、雨や雪などに含まれる形ではなく、大気中から直接農作物や地表、河川などに沈着することをいう。
間接汚染(かんせつおせん)
大気中の放射性物質が土壌に降下し土壌を通じて、作物の根から体内に取り込まれて汚染されること。
  • 参考文献
  • 渋谷政夫編,1979,土壌汚染の機構と解析 -環境科学特論- ,産業図書
ガンマ(γ)線(がんません)
放射線の一つで、原子核から放出される電磁波。不安定な原子核がアルファ線やベータ線を放出した後に、さらにガンマ線を放出してより安定な原子核に移行する。アルファ線やベータ線に比べて透過力が強いので、遮蔽するために厚い鉛板やコンクリート壁が必要である 。ヨウ素、セシウム、ウラン、プルトニウムなどから発生する。
帰還困難区域(きかんこんなんくいき) 
福島第一原発事故後6年間を経過してもなお、年間積算線量が20ミリシーベルトを下回らない可能性のある地域で、平成24年3月時点で年間積算線量が50ミリシーベルトを超える地域が相当する。
住民の避難が求められ、営農など屋外の作業は制限されている。
25年産米の作付等に関する方針では、全域で作付制限の対象地域に指定されている。ただし、住民の帰還や農地の除染などの状況に応じて、作付再開に向けた実証栽培(作付再開準備)、または生産量の全量把握と全袋検査を要件とする作付(全量生産出荷管理)を行うこともできる。
基部吸収(きぶきゅうしゅう)
作物の根もと(基部)から放射性物質を吸収すること。
居住制限区域(きょじゅうせいげんくいき) 
年間積算線量が20ミリシーベルトを超えるおそれがあり、住民の被ばく線量を低減するため、避難の継続が求められる地域。将来的には住民の帰還を目指して、除染の実施と基盤施設の復旧を図る。年間積算線量が20ミリシーベルト以下であることが確実となった場合には「避難指示解除準備区域」に移行する。
農地の保全管理を目的とした一時的な立ち入りは認められているが、作物の作付については国の指示に従うこととされている。
25年産米の作付等に関する方針では作付制限を行うとしているが、作付再開に向けた実証栽培(作付再開準備)が認められた地域もある。
グレイ
吸収した放射線量の単位で、表記はGy。1グレイは1キログラムの質量に1ジュールのエネルギーが吸収されることと定義される。
グローバルフォールアウト
核実験や原子力事故で放出された放射性物質が大気圏に上昇し、気流に乗って地球規模に拡散して降下したもの。
ゲルマニウム半導体検出器
ゲルマニウム半導体検出器(げるまにうむはんどうたいけんしゅつき)
半導体を利用した放射線検出器で、土壌や農作物などの試料中の放射線を測定して、放射性物質の濃度を測定する。ガンマ線を検知し、ヨウ素やセシウムなどの放射性核種を同定できる。同じガンマ線を検知するNaIシンチレーション検出器に比べて精度が高い。外部のガンマ線の影響を取り除くため、鉄や鉛の遮蔽体に試料を入れて分析する。
検出限界(けんしゅつげんかい)
試料に含まれる放射性物質を測定器で検出する場合に、検出できる最小値のこと。定量下限と同様に、検出結果がどの程度の「十分な信頼性」を持つかを判断するために用いられる。測定には誤差が生じるという前提に基づき、測定誤差の3倍を検出限界とする。測定機器の性能、測定時間、試料の量、および核種によって異なる。
懸濁除去
懸濁除去(けんだくじょきょ)
水田で代かきを行った後、土の粒子が分散している濁水を貯水施設に移し、凝集剤を加えて放射性物質が吸着している土壌を分離し、分離した土壌を廃棄する除染技術。
懸濁態セシウム(けんだくたいせしうむ)
農業用水や田面水中などで浮遊する土壌粒子や有機物などに吸着および固定されているセシウムのこと。孔径0.45μmのメンブレンフィルター上に残るもので、作物には直接吸収されない。降雨時に濃度が上昇する。
減容化(げんようか)
土壌、植物体および植物残渣などの高濃度の放射性物質を含む廃棄物を、焼却、破砕および圧縮などの処理を行うことにより、容積を少なくすること。 減容化することによって、仮置き場や今後の中間貯蔵施設などへの高濃度の廃棄物の貯蔵量を減らすことが期待されている。
高圧洗浄
高圧洗浄(こうあつせんじょう)
放射性物質の付着した果樹の樹体を洗浄する除染技術。粗皮(古くなり剥がれかかった樹皮)削りができないモモやウメなどを対象に、高圧洗浄機を用いて幹や枝を洗浄する。
交換性カリウム(こうかんせいかりうむ)
pH7、濃度1mol/Lの酢酸アンモニウム溶液によって交換抽出されるカリウムイオンのこと。カリウムとセシウムは似た性質があり、植物に吸収される際に競合する。このため、カリウム肥料や堆肥などを施用して土壌中の交換性カリウム含量を高くすることが、植物の放射性セシウム吸収の抑制に効果がある。
交換性放射性セシウム(こうかんせいほうしゃせいせしうむ)
土壌の腐植や粘土粒子表面の負荷電に吸着されていると考えられている放射性セシウムで、pH7、濃度1mol/Lの酢酸アンモニウム溶液によって抽出される。 カルシウム、マグネシウム、アンモニウムイオンなどの陽イオンと容易に交換され、土壌溶液中に遊離されやすいため、作物に吸収されやすいと考えられている。
交差汚染(こうさおせん)
汚染度の低いものが汚染度の高いものと接触して起こる汚染。福島第一原発事故後に初めて使用する場合やしばらく使用しなかった籾すり機や選別・計量機には、内部に放射性セシウムを高濃度に含むゴミやほこりが溜まっていることがあり、そのまま使用すると穀物を汚染してしまう。対策として、「とも洗い」を行う。
コーデックス委員会(こーでっくすいいんかい)
国際食品規格委員会。1963年にFAO及びWHOにより設置された国際的な政府間機関。消費者の健康を守り、貿易の公正さを図るため、国際的な食品基準を定めている。放射性核種のガイドライン値では、年間1ミリシーベルトを超えないように設定されている。セシウムの値は1,000Bq/kgで、日本の暫定規制値よりも高く、これは、放射能汚染食品の割合を10%と、日本より少ない割合で仮定されているためである。また、セシウム以外にもガイドライン値が設定されており、ストロンチウムでは100Bq/kgである。
固化剤(こかざい)
土を固めるマグネシウム系などの資材。放射能に汚染された土壌に散布し、固化した表土を削り取る物理的な除染技術に用いられる。作業中に放射性物質を含んだ微粒子が飛散しないことや、取りこぼしを防ぐことができ、単純な土壌の剥ぎ取りよりも作業効率、除染率が高い。また、マグネシウムを素材としているので、土壌や作物へは無害である。