筑波大学大学院植物細胞遺伝情報学分野

筑波大学大学院 生命環境科学研究科 生物圏資源科学専攻 植物細胞遺伝情報学分野

Laboratory of Plant Cell Engineering, Graduate School of Life and Environmental Sciences, University of Tsukuba

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更新日 2012-07-10 | 作成日 2011-12-28

研究Topics

コムギのゲノムを解読する

コムギは、イネやトウモロコシと並ぶ重要な穀物です。すでに、ゲノム配列が決定されたイネやトウモロコシと違い、3つのゲノムを持つ異質6倍体でありゲノム構造が複雑なことや、そのサイズがイネの40倍にも及ぶことから、ゲノム解読は進んでいませんでした。
 現在、世界のコムギ研究者が共同して国際コムギゲノム解読コンソーシアム(IWGSC)を組織し、染色体を分担する形でゲノム解読を進めています。コンソーシアムでは、育種などさまざまな実用的な場面で利用価値の高い高精度なコムギゲノム配列を提供することを目標に、研究を進めています。
 私たちは日本の他の研究機関と共同してIWGSCに参加し、6B染色体を対象としてゲノム解読を進めており、日本のコムギの生産性向上を目指した新しい育種システム構築の基盤を提供していきたいと考えています。

IWGSC HPへのリンクLinkIcon

DSC_0011.JPGコムギ(Triticum aestivum L.)
Physical-mapping-flags.gifPhysical-mapping-flags.gifコムギPhysical mappingの国際分担

花粉から次代へ遺伝するミトコンドリアプラスミド

ナタネのミトコンドリアには220kbのミトコンドリアゲノムに加えて、11.6kbの線状プラスミドが存在しています。このプラスミドはミトコンドリアゲノムが正常に母性遺伝を行う場合でも、花粉を通じて父性遺伝するという特異な性質を持っています。
 この父性遺伝性の全体像を解明するために、プラスミドの構造決定、発現解析、細胞内での挙動観察、制御遺伝子の探索等を行ってきました。
 プラスミドの父性遺伝性は、核遺伝子により制御されておりQTL解析の結果、A5、C2、C9染色体に1つずつQTLが存在することが明らかとなり、それぞれqPpt1、qPpt2、qPpt3と名付けました。3つのQTL間に明らかなエピスタシスは見られず、ミトコンドリアプラスミドの父性遺伝は独立した比較的少数の核遺伝子により制御されていると考えられます。

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DSC_15.JPGナタネ(Brassica napus L.)
父性遺伝図.pdf父性遺伝図.pdfプラスミドとゲノムの後代への伝わり方
父性遺伝図 2.pdfプラスミド伝達率の品種間差異

TaWRKY45遺伝子を利用した複合病害抵抗性コムギの作出

転写因子の一つであるWRKY45遺伝子(TaWRKY45)遺伝子をコムギから単離し、その構造・発現等を調査しました。また、TaWRKY45遺伝子を過剰発現するコムギ形質転換体を作成、赤かび病、うどんこ病、赤さび病の3種類の糸状菌病に対する抵抗性を検定したところ、TaWRKY45発現個体はいずれの病害に対しても抵抗性を示すことが明らかになりました。

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FHB_WRKY.tifTaWRKY45導入による赤かび病抵抗性
PM_WRKY45.tifTaWRKY45導入によるうどんこ病抵抗性
SR_WRKY45.tifTaWRKY45導入による赤さび病抵抗性

ソルガム紫斑点病抵抗性遺伝子の単離同定

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ソルガムの低コスト栽培のために不可欠な病害抵抗性遺伝子について研究を行っています。ソルガム紫斑点病は日本では九州など西南地域で多発する病気です。
 抵抗性品種SIL-05と罹病性品種bmr-6から作成した集団を利用し、紫斑点病候補遺伝子領域のマッピングを行い、紫斑点病抵抗性遺伝子ds1の候補遺伝子を特定しました。
 この遺伝子が機能しなくなることでソルガムは紫斑点病抵抗性を示すと考えられます。

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ムギ類の出穂制御機構の解明

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シロイヌナズナやイネ等のモデル植物での花成制御研究により、CO-FTといった基幹的な遺伝子ネットワークが植物種に共通であることが知られています。しかし、それ以外にさまざまな種特異的な遺伝因子により、花成(出穂)が精密に制御されていることが明らかになりつつあります。
 長日植物であるコムギやオオムギのムギ類を材料に、近縁ではあるけれど短日植物であるイネと比較しながら、FT-like遺伝子群やその上流に位置するCO-like遺伝子群の発現解析等を通じて、ムギ類特異的な出穂制御遺伝子ネットワークの解明を行っています。

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