日507号、日508号とその交雑原種
及び中507号、中508号とその交雑原種
並びに四元交雑種

農林水産省農蚕園芸局(1989)『蚕の新品種技術資料118』p.11〜14


日507号
化性:二化性
系統:日日固定種
来歴:本種は農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所において育成した二化性白繭系日日固定種である。
蟻蚕は暗褐色を呈し、蚕児の体色は青系に淡赤系を混じ、斑紋は形、姫混である。
育児の経過は、日137号に比べて稚蚕期はやや短く、5齢期がやや長い。本種は化蛹が遅いため、菰抜き・収繭作業はともに1日遅く行うのがよい。
虫質の強健度はやや低いが、眠起は良く揃い、飼育取扱いは容易である。特に5齢期は食桑活発で、蚕体はよく肥大するが、飽食させると産卵性に悪影響を及ぼすので、給桑量は普通でよい。
は白色の長楕円形で、ちぢらはやや粗である。
越年卵の卵色は藤鼠である。
本種と日508号とを交配する場合、両品種の取扱いがほぼ等しいときは、催青着手を同時にすればよい。本種は普通品種に比べ発蛾が1〜2日遅く、催青日数は1〜2日長い。
蚕種の人工孵化は、即浸では5分、冷浸では6分前後の塩酸浸漬時間が適当である。

日508号
化性:二化性
系統:日日固定種
来歴:本種は農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所において育成した二化性白繭系日日固定種である。
蟻蚕は暗褐色を呈し、蚕児の体色は青系に淡赤系を混じ、斑紋は形、姫混である。
蚕児の経過は日137号に比べて稚蚕期、壮蚕期とも大差がない。本種は化蛹が遅いため、菰抜き・収繭作業はともに1日遅く行うのがよい。
虫質は強健度はやや低いが、眠起はよく揃い、飼育取扱いは容易である。特に5齢期は食桑が活発で蚕体はよく肥大するが、飽食させると産卵性に悪影響を及ぼすので、給桑量は普通でよい。
は白色の長楕円形で、ちぢらはやや粗である。
越年卵の卵色は藤鼠である。
本種と日507号とを交配する場合、両品種の取扱いがほぼ等しいときは、催青着手を同時にすればよい。本種は普通品種に比べて発蛾が1〜2日遅く、催青日数は1〜2日長い。
蚕種の人工孵化は、即浸では5分、冷浸では6分前後の塩酸浸漬時間が適当である。

日507号×日508号
化性:二化性
系統:日日交雑原種
蟻蚕は暗褐色を呈し、蚕児の体色は青系に淡赤系を混じ、斑紋は形、姫混である。
蚕児の経過は日137号に比べて稚蚕期は0.5日、壮蚕期は約1〜1.5日長めである。本種は化蛹が遅いため、菰抜き・収繭作業はともに1日遅く行うのがよい。
虫質の強健度はやや低いが、眠起はよく揃い、飼育取扱いは容易である。特に5齢期は極めて食桑活発で蚕体はよく肥大するので、桑不足にならないよう注意し、薄飼いにして飽食させることが大切である。
は白色の長楕円形で、ちぢらはやや粗である。
越年卵の卵色は藤鼠である。
本種と中507号と中508号との交雑原種を交配する場合、両交雑原種の取扱いがほぼ等しいときは、催青着手を同時にすればよい。本種は普通品種に比べ発蛾が1〜2日遅く、催青日数は1〜2日長い。
蚕種の人][艀化は、即浸では5分、冷浸では6分前後の塩酸浸漬時間が適当である。

中507号
化性:二化性
系統:中中固定種.
来歴:本種は農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所において育成した二化性白繭系中中固定種である。
蟻蚕は黒褐色を呈し、蚕児の体色は青系で、斑紋は姫である。
蚕児の経過は支146号に比べて稚蚕期は大差ないが、壮蚕期は約0.5〜1日長い。本種は化蛹が遅いため、菰抜き・収繭作業はともに1日遅く行うのがよい。
虫質の強健度はやや低いが、眠起はよく揃い飼育取扱いは容易である。特に5齢期は食桑が活発で蚕体がよく肥大するが、飽食させると産卵性に悪影響を及ぼすので、給桑量は普通でよい。
は白色の楕円形で、ちぢらは普通である。
越年卵の卵色は帯緑藤鼠である。
本種と中508号とを交配する場合、両品種の取扱いがほぼ等しいときは、催青着手を同時にすればよい。本種は普通品種に比べ、発蛾が1〜2日遅く、催青日数は1〜2日長い。
蚕種の人工鱒化は、即浸では5分、冷浸では6分前後の塩酸浸漬時間が適当である。

中508号
化性:二化性
系統:中中固定種
来歴:本種は農林水産省蚕糸・昆虫農業技術研究所において育成した二化性白繭系中中固定種である。
蟻蚕は黒褐色を呈し、蚕児の体色は青系で、斑紋は姫である。
蚕児の経過は支146号に比べて稚蚕期は大差ないが、壮蚕期は約0.5〜1日長い。本種は化蛹が遅いため、菰抜き・収繭作業はともに1日遅く行うのがよい。
虫質の強健度はやや低いが、眠起はよく揃い、飼育取扱いは容易である。特に5齢期は食桑が活発で蚕体はよく肥大するが、飽食させると産卵性に悪影響を及ぼすので、給桑量は普通でよい。
は白色の長楕円形で、ちぢらは普通である。
越年卵の卵色は帯緑藤鼠である。
本種と中507号とを交配する場合、両品種の取扱いがほぼ等しいときは、催青着手を同時にすればよい。本種は普通品種に比べて、発蛾が1〜2日遅く、催青日数は1〜2日長い。
蚕種の人工艀化は、即浸では5分、冷浸では6分前後の塩酸浸漬時間が適当である。

中507号×中508号
化性:二化性
系統:中中交雑原種
蟻蚕は黒褐色を呈し、蚕児の体色は青系で、斑紋は姫である。
蚕児の経過は支146号に比べて稚蚕期は0.5〜1日長く、壮蚕期は約2日長めである。本種は化蛹が遅いため、菰抜き・収繭作業はともに1日遅く行うのがよい。
虫質の強健度はやや低いが、眠起はよく揃い、飼育取扱いは容易である。特に5齢期は極めて食桑活発で蚕体はよく肥大するので桑不足にならないよう注意し、薄飼いにして飽食させることが大切である。
は白色の楕円形で、ちぢらは普通である。
越年卵の卵色は帯緑藤鼠である。
本種と日507号と日508号との交雑原種を交配する場合、両交雑原種の取扱いがほぼ等しいときは催青着手を同時にすればよい。本種は普通品種に比べて、発蛾が1〜2日遅く、催青日数は1〜2日長い。
蚕種の人工艀化は、即浸では5分、冷浸では6分前後の塩酸浸漬時間が適当である。

(日507号×日508号)×(中507号×中508号)(愛称:さきがけ)
(この四元交雑種を7・8×7・8と略称する)
化性:二化性
系統:日中交雑種
適用蚕期:春蚕期及び夏秋蚕期
本種は日中四元交雑二化性の白繭種で、稚蚕人工飼料育及び桑葉育に適する特殊用途用の太繊度品種である。
蚕児の体色は青系に淡赤系を混じ、斑紋は形、姫混である。
蚕児の経過は5・1×6・1に比べて稚蚕期、壮蚕期とも大差ない。
蚕体が極めて肥大するため、虫質は強健度の面で多少問題あるが、稚蚕人工飼料育、桑葉育ともに眠起はよく揃い、飼育取扱いは容易である。
掃立直後から食欲旺盛で食餌が活発なので、早めに拡座を行い、給餌不足にならないように注意が肝要である。5齢期は食桑が極めて活発で蚕体が肥大するので、桑不足にならないよう注意し、薄飼いにし飽食させることが大切である。稚蚕期の生育が十分でないと、4〜5齢の急速な発育に耐えられず、5齢末期の罹病、不吐糸蚕、蔟中斃蚕の原因になる。また、高温多湿は可能な限り避けること。
は大きく、在来の回転蔟の区画には入らないで、区画表面に吐糸する場合が多くなるので、出来れば上蔟は百年蔟か類似の蔟を用い、1枚当たり160頭を目安に収容するのがよい。また、蚕体が大きく重いので自然上蔟では這い上がりが悪く、座中繭を多発するので注意が肝要である。
なお、催青日数が1〜2日長いので、出庫・催青の際はこの点に注意すること。また、化蛹が遅いので、菰抜き・収繭作業はともに1日遅く行うのがよい。
は白色の長楕円形で、ちぢらは普通である。
本種は化蛹歩合、繭層歩合、生糸量歩合が低く、繭糸長が短く、繭層練減はやや多いが、収繭量が25.5s以上で、繭糸繊度は4.3デニール内外と太く優れた特長があり、特殊用途用のほか、洋装用素材、特に中・外衣用素材に適する。


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