熱中症とお金
R2年9月 田中 正浩
残暑の候ではありますが、全国的に例年より暑い日が続いており、熱中症にはより一層注意しなければなりません。 熱中症は対策を怠れば誰にも起こり得るもので、もしかかってしまうと健康被害だけでなく、それに伴い様々な経済被害が生じる可能性があります。
<病院に搬送された場合の費用>
熱中症で動けなくなり救急車で病院に搬送されたと考えてみましょう。
初診料(288点)+点滴注射(98点)+検査(末梢血一般、生化学検査Ⅰ、尿一般 425点)で見積もると、2433円(自己負担三割)となります。これは素人の私が診療報酬点数(2020)(※1)から最低限の項目を抽出しただけなので、実際にはより高額になると思われます。
次に入院してしまった場合をみてみましょう。実際、病院に搬送されるほどの症状(Ⅱ度以上)の場合は入院を要することが多いようです。
生命保険文化センターの生活保障に関する調査《速報版》(令和元年度)(※2)によると、入院時の1日あたりの自己負担費用は平均23,300円とあるので、救急車で搬送されそのまま病院で一泊2日した場合、5万円弱の費用がかかる計算になります。
<入院による収入の減少>
熱中症によって病院に搬送され入院してしまうと、その間働くことができません。特に農業は出荷ができなければそのまま機会損失となってしまいます。生活保障に関する調査によると、入院時の1日あたりの逸失収入(あった人)は平均19,500円とあるので、重症となり入院に数が長くなるほど、収入が減少してしまいます。
<保険>
治療費について、公的医療保険以外にも一般的に労災保険や民間の医療保険が適用されます。傷害保険では対象外(特約での保障)となっているケースが多いようです。いずれにしても、ご自身が加入されている保険を一度確認してみましょう。収入の減少については、農業保険法に基づく農業保険制度のうち、収入保険制度がけがや病気による機会損失も対象としているので、ご興味のある方はこちらをご参照ください。
<生産性の低下>
熱中症は体内の水分/塩分バランスの崩壊や熱によるダメージにより、治療を行っても頭痛や体のだるさが数日間続くことがあるそうです。この間の労働生産性は低下しますし、下手をすれば再度熱中症にかかり働けなくなる可能性もあります。国際労働機関によると、2030年には熱ストレスにより世界農業人口の労働量のうち60%が失われる(※3)と予測しており、暑さ対策は熱中症予防のみならず、これからの経営において必要な投資となりそうです。
大切な命と経営を守るため、しっかりと暑さ対策を行い、熱中症を予防しましょう。
http://2020.mfeesw.net/(2020年8月20日)
https://www.jili.or.jp/research/report/pdf/r1hosho.pdf(2020年8月20日)
https://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/---dgreports/---dcomm/---publ/documents/publication/wcms_711919.pdf(2020年8月20日)