農作業安全コラム

後続車や対向車から認識してもらえるように

R3年12月 手島 司

 冬は空気中の水蒸気が少なく空気が乾燥しているため、一般に空気が澄んで星が綺麗に見えるそうです。冬の星座と言えば12月~2月頃にかけて夜空の見やすい位置に現れるものを指しますが、例えばオリオン座について、光を放つ星の「一部が隠れてしまう」とそれがオリオン座だと「すぐには認識できない」人がいるかもしれません。

 さて、話の展開としては急ですが、前照灯、車幅灯、尾灯等を点灯した状態の自動車が走行する、暗くなった道路に視線を下ろしてみます。これらの灯火類の取付け位置はもちろんどこでも良いわけではなく、取付け範囲が道路運送車両の保安基準に定められています。例えば、車幅灯では照明部の「最外縁は自動車の最外側から400mm以内」「上縁の高さは地上2100mm以内」「下縁の高さは地上350mm以上」とあり、これらのルールに従って製作された自動車であれば、後続車や対向車から「同じ車線の前方あるいは対向車線で自動車が走行している」と認識しやすくなるということを意味していると思われます。 
 ただし、もし一部の灯火類の不点灯(球切れ)に気づかず整備不良の状態で走行(道路交通法違反に該当)してしまうと、後続車や対向車からは二輪車に見えてしまう(正しい形や大きさを認識してもらえない)ことがあるかもしれず、広くない道路での追い越しやすれ違いの時などたいへん危険です。一方で特に後続車から見て灯火類が「一部隠れてしまう」、つまり保安基準を満たさず自動車と認識しづらくなる状況も起こり得ます。それは例えば乗用トラクターが作業機を装着したまま道路を走行するような場合です。道路における作業機付きトラクターについては、そのままの状態では保安基準を満たすことができず、その扱いは長らく色々な立場の人にとって課題となっていました。

 そんな状況を好転させるべく、関係省庁や団体等が一体となって作業機付きトラクターの公道走行問題にここ数年取り組んで来ました。その内容は、保安基準を満たすためには「何を確認すれば良いか」「どのような装備・表示を追加すれば良いか」「何を制限して走行すれば良いか」「どのような届け出をすれば良いか」など詳細かつ多岐にわたっています。一言でいえば「色々と気を付けなければならないことがある」ということではありますが、作業機付きトラクターで道路を走行するには、まずは自動車の要件を満たして後続車等から「自動車が走行している」と早めに認識してもらうことが安全への第一歩と考えますので、対応をよろしくお願いいたします。

 

キーワード:安全装置・対策/乗用トラクター/運搬・移動
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