農作業における腰痛
R4年12月 向 霄涵
腰痛は人の健康な生活を脅かす代表的な症状のひとつで、実際に多くの方々が苦しまれています。生産者も例外ではなく、農作業における大きな問題のひとつとして、国内外を問わず認識されています。
仕事中に腰痛が引き起こされる原因については、重い物を持った場合などに、腰椎に圧縮する力がかかることによる損傷が指摘されています(※1)。この圧縮力による損傷を防ぐための基準として、ISO 11228-1(2003)では、一般労働者の場合、持ち上げ重量を23kg未満とするように提案されていますが(※2)、農業ではこれよりも重い物を持ち上げる場面は珍しくありません。さらに、腰椎の損傷リスクは年齢にも比例するとも指摘されており(※3)、高齢化が進んでいる日本の農業では、腰痛は一層重要な問題と言えます。
海外では、農作業における腰痛の事例について調査が行われています(※4)。その結果によると、腰痛をもたらす作業で最も多かったのは収穫で半数以上を占め,次いで荷運び、剪定、植付け、掘り取り、皮剥き、選別、除草となっており、これらに共通する姿勢は「前かがみ」でした。
もちろん、海外と国内では作業内容に違いがある面もありますが、「前かがみ」の作業が多いのは同じです。つまり、農作業における腰椎の負担を軽減し、腰痛を防ぐためには、よく言われるように、上半身の曲げ角度、体幹(体の中心)から荷物や作業位置までの距離、バランスの取れた持ち上げ方等に注意し、適切な作業動作・姿勢(できるだけ前傾せず、荷物を体の近くに寄せ、負荷が均等にかかるように上げ下げする等)を行う必要があります。
なお、そうは言っても実際には、姿勢の改善だけでは十分対処できない場合も多くあります。現在は、アシストスーツ等、様々な負担軽減ツールも入手できるようになっています。機能も価格も様々ですので、ぜひご自身の作業内容にあったものを導入し、軽労化だけでなく、腰痛防止にもつなげていただければと思います。