安全のコスパ
R5年6月 田中 正浩
何かとコスパ(コストパフォーマンス:費用対効果)が問われる世の中となってきた今日この頃。ふと安全のコスパはどれくらいあるのか気になり調べてみました。
<安全対策の費用対効果は2.7倍>
中央労働災害防止協会調査研究部が製造業などの事業場(139事業所、1事業所当たりの労働者数平均732人)を対象にしたアンケート調査結果(※1)によると、1事業所当たり1年間の安全に係る費用は2億5654万円、安全対策に係る効果(災害防止・災害回避に係る効果、生産性向上などの効果)は6億9340万円となり、事業場が安全に投じた費用の2.7倍の費用対効果があると推計されています。安全に係る費用のうち、安全対策の費用としては「機械・設備・個人用保護具等にかかわる費用」が最も大きく全体の半分程度を占めており、災害の発生に係る諸費用としては「労災保険料」と「損害保険料額」が約81%を占めています。一方、安全対策に係る効果のうち、主要効果(災害防止・災害回避)としては労働災害が回避されることによる損失額回避額(労働者と事業所を合計)が最も大きく約83%を占めており、副次効果(生産性向上など)としては「生産性向上」が45.5%、「企業イメージや信用向上、社会的評価が高まる効果」が17.9%、「労働意欲やモラル向上、職場の人間関係が良くなる効果」が14.6%、「早退や遅刻、欠勤、離職率、疾病罹患率の減少効果」が14.3%となっています。
こういった研究結果を参考にして農業現場の実情を加味して安全対策の費用対効果を試算してみる必要があるかもしれませんが、機械や設備、保護具等と保険料に投じた費用により生産性向上と信用力向上、労働環境の向上、労働者の稼働率の向上など2.7倍の経済効果が生まれると考えると、農業現場でも安全対策に投資することは経営的にメリットがあると考えられます。
中央労働災害防止協会では、安全対策の経済的評価ツール第1.0版(※2)も公表しています。製造業における「死亡災害」のリスクを低減する安全対策を対象としたものですが、農業現場にも応用できるか一緒に計算してみましょう。
