農作業安全コラム

かくれ脱水症になっていませんか?

R6年6月 西川 純

 6月ということで気温も高くなり、熱中症に警戒する季節になりました。本コラムで何度も取り扱っているテーマですが、安全に農作業を行っていただくため、今一度熱中症についてお話ししたいと思います。

 国内における暑さの定義は、気象庁によって夏日(25℃以上)、真夏日(30℃以上)、猛暑日(35℃以上)の3つの予報用語として定められています。また、定義はされていませんが、ニュースなどでは酷暑日(40℃以上)として扱われている場合もあります。熱中症の危険性が出てくる目安ですが、暑さ指数(WBGT)別ウィンドウという、湿度、熱環境(日射・輻射)、気温の3つの数値から計算される数値が28℃を超えてくると、熱中症によって搬送される患者数が増加することが分かっています。よく耳にする「警戒」「厳重警戒」「危険(運動は原則禁止)」という区分はこのWBGTによって決められています。熱環境という言葉はあまりなじみがないですが、気温を目安にすると、おおよそ31℃以上、つまり真夏日からが熱中症の危険性が高まってきます。昨今の気候変動の影響もあり、真夏日の日数は、1910年から2019年までの100年で、約6日も増加しています。また、 真夏日の平均年間日数も、1990年から2019年までの最近30年間で、1910年から1939年の35日と比べて、約1.2倍も増加しているというデータもあり、熱中症のリスクは今後より増加してくるものと思います。

 さて、農作業における熱中症対策は、日よけ、こまめな水分・塩分補給と休息が基本ですが、熱中症の症状が見られる一歩手前の段階「かくれ脱水症」を見分け、早期に熱中症を回避することがとても重要です。厚生労働省では、このかくれ脱水症の見分け方について、指の爪や尿の色を見てセルフチェックできる簡易判定法別ウィンドウを公開しています。爪での判断方法は農作業中でも利用できるものですので、定期的にチェックを行い、熱中症予防にご活用ください。また、暑くなる時期に急に作業をはじめると、体が暑さに慣れておらず、熱中症のリスクが高くなるため、徐々に暑さに体を慣れさせる「暑熱順化(しょねつじゅんか)」が熱中症対策として有効です。暑熱順化させることで、低い体温でも発汗量が増え、血流も増加するため、熱が逃げやすくなり、体温の上昇を防ぐことができます。日本気象協会ではこの暑熱順化が必要な時期や重要性別ウィンドウを公開していますので、参考にしていただければ幸いです。

 最後に、真夏日(30℃以上)からが熱中症の危険性が高まると説明しましたが、前述した湿度や日射、暑熱順化の不足や、その日の体調、服装、労働環境によっても、その危険性が変わってきますので、気温以外の情報にも十分留意いただき、普段から熱中症対策を心掛けましょう。

 

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