農作業安全コラム

第22回国際人間工学学会に参加して

R7年3月 向 霄涵

  先日、第22回国際人間工学学会(IEA2024、2024年8月25日~30日)に参加しました。この学会は、人間工学分野において3年に1度開催される、権威のある国際会議です。人間工学は、働きやすい職場や生活しやすい環境を実現し、安全で使いやすい道具や機械をつくることに役立つ実践的な科学技術です。今回の会議は、新しい人間工学技術が職場やレジャー活動の中で、どのように生活の質を向上させるかについて探求することを目指しています。私は特に農作業における腰部負担の軽減に焦点を当てました。

  農作業では、収穫、荷運び、植付けなどで腰に大きな負担がかかり、多くの農業従事者が腰痛に悩んでいます。会議の農業関連セッションでは、腰痛対策のさまざまな研究が発表されました。例えば、カリフォルニア大学のFadi Fathallah氏は畝のコンパクト化による資源の効率的な利用について発表し、ブラジルのCarolina Alonso氏は、収穫物用ダクトを取り付けたはしごによる果樹収穫作業の軽労化について紹介しました。アシストスーツの活用についても議論され、私は屈み作業における腰部疲労に対するアシスト装置の効果について研究発表を行いました(図1)。
  私の研究では、姿勢保持のみの場合と、動的作業と姿勢保持を組み合わせた場合のアシストスーツの効果を比較しました。その結果、組み合わせの作業において、より大きな負担軽減効果を示しました。質疑応答では、アシストスーツの安全性評価について多くの関心が寄せられました。参加者から「どのような材料であれば柔らかいとみなすのか」といった質問があり、議論の中でアシスト装置の材料について身体の動きに追従する必要があるという示唆を受けました。この意見は、ISO 13482(サービスロボットの安全)におけるアシスト装置の構造を分類する方法を検討する上で大変参考となりました。

  今回の会議を通じて、世界中の研究者とのつながりを構築し、農作業者の負担軽減に向けた人間工学技術の推進が重要であると改めて実感しました。


図1.アシストスーツの評価についての研究発表

図1 アシストスーツの評価についての研究発表

 

キーワード:安全装置・対策/研究
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