眼のしくみと農作業
H16年5月 菊池 豊
作業安全には、モノをはっきり見る、聞くことが基本です。しかし、眼のしくみは不思議なことがたくさんあります。たとえば、赤色を長く見つめて、急に白地に目を転じると、緑色に見えることがあります。これを補色残像といいます。たとえば、手術中に血液の赤色を長く見ると、白衣上に補色の緑色が見えてくるそうです。そのため、手術衣はうすい緑色にして残像を消しています。数年前、トマトやイチゴの選別作業で眼が疲れるということで、ある方より相談を受けたことがありました。結果的に、選別台の上に写真のようなグレー系のシートを敷くことになりました。
また、一般的に、同じ人でも明るいところでは視力はよくなり、暗いところでは悪くなります。そのため、作業中室内を明るくするのは原則ですが、明るくしすぎるとグレア(まぶしさ)のため、かえって見にくくなってしまうこともあります。それには遮光眼鏡が有効です。もともと網膜色素変性した方のための補装具ですが、高齢者にも有用といわれています。普通のサングラスでは光の全波長を遮断するので暗くなりますが、遮光眼鏡はグレアの原因となる500nm前後の光や眼に悪い紫外線のみをカットします。黄系の遮光眼鏡を用いればコントラストがあがり、視力がかえってあがる場合もあります。
日本において、地表で受ける太陽光は5月と8月にピークになるそうです。農業で言えば水田の代かき、田植えや防除作業等の時期です。水面を見ながらの作業は、そうでない場合の2倍の光が眼に飛び込んでくると言われています。こういったことも利用して、安全・快適な農作業に努めていきたいものです。