農作業安全コラム

乗用トラクターのシートベルト

H19年5月 森本 國夫

 乗用トラクターのシートベルトは何のために付いているのでしょうか。実は、安全キャブ・フレーム(以下「ROPS」)の附属品のようなものなのです。

 生研センター(現:革新工学センター)ではメーカーの依頼によってROPSの検査を行いますが、転落転倒事故を想定して定められた負荷をROPSにかけた時に、座席を基準として設定された運転者を守るための空間を確保できる強度があるかどうかということで合否が判定されます。つまり、転落転倒時に運転者がシートベルトで座席に固定されているのが前提であって、そうでなければROPSは役割を十分に果たすことができないのです。

 昨年6月の本コラムで転落転倒事故においてROPSの救命効果が高いという調査結果を紹介しました。同じ調査でROPSを装備した乗用トラクターを持っている人に、シートベルトの利用状況を聞いたのですが、常時締めるのは5%、路上だけで締めるのが11%で、ほとんどあるいは全く使わない人が大多数でした。事故時にシートベルトを締めていない人が大部分であったはずなのに、ROPSの救命効果は高かった訳です。その考察は下の(注)に示した記事をご覧いただきたいのですが、シートベルトを締めれば、死傷者を更に少なくできると私たちは考えています。

(注)近日中に「農作業安全情報センター」にROPSとシートベルトに関する記事を掲載する予定。

 

キーワード:安全装置・対策/乗用トラクター
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