年齢と農作業事故の関係
H20年7月 森本 國夫
自営農家には会社のような定年はありませんので、自分の判断で相当な高年齢になるまで働き続けることが可能です。これは農業のすばらしいところでありますが、農作業事故という観点からは大きな問題になっています。
図に農林水産省が調査した農業従事者の年齢階層別10万人当たり死亡事故発生件数(1999~2003年、5カ年の平均値)を示します。30歳代までは比較的少ないのですが、その後は高年齢になるに従って死亡事故が急激に増え、特に70歳以上で著しいのがわかります。
個人差はありますが、高年齢になれば身体のいろいろな能力が低下してきますので、事故の危険性は高まります。図のデータから見れば、身体能力の低下は既に40歳代から始まっていると思われることも注目すべきところです。筆者は今年還暦ですが、このデータによれば若い人たちの5倍くらいは事故の確率が高いことになります。しかし、本人は身体能力の低下がそれほど深刻だとは感じておらず、まだまだ若い者に負けないつもりなのです。この本人の身体能力に対する思い込み(幻想?)と、現実の身体能力とのずれも事故の要因になるでしょう。
残念ながら、農業機械の運転操作を含めた農作業に関連する身体能力を調べる専用の方法はないようです。しかし、例えば文部科学省の新体力テスト実施要項(20~64歳対象、65~79歳対象)に基づくテスト、運転免許証を更新する70歳以上の方を対象にした高齢者講習における適性診断などで、ある程度の見当がつくのではないでしょうか。
人は自分が事故の被害者になることをなかなか想定できないものですが、現実には誰にでも起こりうることです。事故の実態を知り、自分の身体能力の実態も知って、農作業事故を防ぎましょう。