農作業安全コラム

終わりよければすべてよし

H21年12月 冨田 宗樹

 師走となり、今年もいよいよ押し迫って参りました。

 皆様の中には、来年へ向けて、コンバイン、乾燥機、もみすり機などの掃除、点検・整備に余念のない方もおられることと思います。

 機械の掃除や点検・整備は、翌年、快適に作業を行うためにとても重要です。一方で、その最中に多くの重傷事故が発生していることも忘れてはなりません。

 このHP上に掲載されている「農業機械事故情報」でも、コンバインやもみすり機での掃除中の重傷事故が報告されており、中では指の切断といった取り返しのつかない事例がいくつもみられます。

 これらは、「機械を駆動したまま掃除を行い、可動部に接触して巻き込まれた」という事故です。皆様もご存じのとおり、そのような行為は、危険であり、ラベルや取扱説明書で明確に禁止されています。しかし、掃除は手間のかかる作業です。誰でも「慣れ」「多忙」「あせり」があったときには、危険を冒してしまうかもしれません。つまり、このような事故は決して他人事ではありません。

 近年の機械では、掃除口の配置や開閉方法等を工夫し、掃除、点検・整備がより容易かつ安全に行えるよう改良が加えられています。コンバインの場合、5分間の空運転の後、2名作業で約2時間掃除を行うことにより、残留する穀物を5g未満にまで減らすことができます(生研センター(現:革新工学センター)鑑定結果による)。このため、必要な時間を確保し、ブロワや工具など適切な道具を用意して、取扱説明書に従って作業すれば、十分な掃除ができるはずです。多少面倒ではあるかも知れませんが、あえて重大な危険を冒す必要はないのです。

 もちろん、現在の機械は完全ではありません。不明な点や問題点は販売店や営業所に問い合わせて下さい。掃除の楽な方法や便利な道具についてアドバイスを受けることも良い考えです。また、機械を購入される際には、掃除や点検・整備のやりやすさも是非検討材料に加えて下さい。そのような皆様の選択が、今後の機械の改良を後押しすることにも大いに役立つはずです。

 「掃除は動力を切って正しい方法で」。皆様がこれを心掛けるだけで多くの事故が防止できます。

 「終わりよければすべてよし」。皆様が事故なく新年を迎え、また元気に農業に取り組まれることを、心より祈念いたします。

 

キーワード:事故/安全装置・対策/コンバイン(自脱型/普通型)/その他の機械/点検・整備・清掃
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