農作業安全コラム

来シーズンに備えて

H24年12月 堀尾 光広

 春の七草を正月七日に粥として食べる習慣は、地方によって形は変わりますが今も残されています。本来は旧暦なのでもう少し先になりますが、健康な一年を送れるように願うとともに豊作を祈願する行事として受け継がれてきたものです。冬の七草という言葉はありませんが、あえて選ぶとしたらネギ、白菜、大根など鍋料理に欠かせない名前が並ぶことになるでしょう。冬の寒さにあたると野菜は美味しくなると言われますが、寒くなるほど収穫作業は大変になります。朝夕の冷え込みが厳しくなるこの時期、重ね着していても感じる冷たさに身体が固くなりがちです。とっさのときに動作が遅れてしまうことも念頭に、いつも以上に安全に意識した作業を心がけてください。

 一方、他の多くの作目では秋の収穫シーズンが終わってほっと一息つき、次のシーズンに備え準備をする時期になります。いつも言われることですが、実り多い秋を迎えるためにはオフシーズンの過ごし方が重要になります。農業機械の整備・点検も怠らず十分に行ってください。ただし不注意によるケガがあっては元も子もありません。工具・部品類が乱雑に放置されていないか、作業に十分な照明が確保されているかなど、作業環境を確認してください。

 以前、海外からの研修生にトラクタの乗り降りはどちらからしますかと尋ねたとき、右側、すなわちブレーキペダルのあるほうから乗り降りするのだと自信満々に答える人がいました。その理由は、とっさのときにブレーキ操作ができるからと言うのです。あれそうだったかなと一瞬迷いましたが、とっさの状況が発生しないような場所にトラクタを停止させ、駐車ブレーキ操作をして乗り降りするのが原則です。したがって、誤って駐車ブレーキを解除してしまうことのないよう乗り降りは左から、が正解でしょう。なんでもないこと、当然だと思っていることでも、思い違いがあるかもしれません。今一度、取扱説明書を熟読することもお忘れなく。

 

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