農作業安全コラム

事故の情報はみんなの財産(その1)

H25年5月 積 栄

 先日の新聞記事で、家庭用ファクスの発火事故が紹介されていました。

 その原因が思いもかけないもので、飼い猫の「おしっこ」なのだそうです。ファクスの上に座った猫の尿が給紙口から流れ込んで、熱源の端子で火花が発生し、その繰り返しで発火した―とのことでした。飼い主の話などをもとに調べたところ、内部から尿の成分が検出されたそうです。

 メーカーでは(当然ながら)猫の尿による事故は想定していなかったそうで、猫が座りやすい形状だった?等の推測をされているようでした。

 このように機械設計の際、全ての事故原因を前もって予見するのは難しい面があります。それでも、一旦事故が起きてしまえば、「予見が難しいから仕方なかった」ではすまされません。今回の事故も、メーカーでは該当する最大60万台を無償で修理するほか、雑誌等でも周知するそうで、大変なコストが想像されます。たとえ予見が難しかったとしても、それだけの対応が社会から求められていることになります。

 先月、平成23年の農作業死亡事故件数が発表されましたが、農業機械による事故は今回も約7割を占め、残念ながら痛ましい事故が起き続けています。気になるのは、ファクスのような消費生活用製品では、上に述べたような「予見が難しい」事故でもこれだけの再発防止策が取られるのに、農業機械では、今までの事故例などから「予見できる」事故ですら、何度も繰り返されている、という現状です。

 もちろん、根本的な対策が難しい事故や、機械が古かったケースも多いですが、事故の現地調査をしていると、「設計時によく考えれば対策できたのでは?」と思われる事例もよく見かけます。

 次回のコラムでは、では我々は何をすればいいのか?を考えたいと思います。(タイトルでほぼバレていますが…)

 

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