農作業安全コラム

誰もが見慣れた中にも危険が…

H26年6月 積 栄

 生研センター(現:革新工学センター)では現在、連携先の道県のご協力の下、農作業事故の詳細調査と分析を進めています。また、実際に自分達も事故現場に赴き、現地調査を行うこともあります。

 道県から提供された事故調査結果を分析していると、死亡事故が多い乗用トラクタの転落では、「道路幅が狭い」「路肩に崩れや雑草があった」といった、「そもそも運転上危険な場所ではないか」と思われる事例が多く見られています(プレスリリース 外部リンクでも紹介しました)。

 ところが、実際にトラクタ転落事故の現地調査に行くと、一見それほど大きな段差や傾斜がある訳でもなく、よくある普通の(そこで死亡事故が起きたとは思えないような)農道が現場だったりすることがあります。

 そのような場所では、恐らくそれまでは誰も「ここで事故が起きる危険がある」とは思わずに、日々往来していたのではないかと思います。しかし実際に現場をよく検証してみると、やはり道路幅に余裕がなかったり、路肩の強度が不十分だったり、ちょっとした段差に見えてもトラクタの転倒には十分危険な高さだったり、実は路面が経年変化で谷側の路肩に向かって下がっていたり―と、「見慣れた普通の農道」は、実際には「危険な農道」だった、という結果が得られたりしています。

 明らかに危険な場所だが、毎日そこを通ることでいつしか本人は慣れてしまった、という問題であれば、事故になる前に周りが指摘することもできます。しかし、「誰もが見慣れた環境」に潜むこういった危険は、なかなか誰にも気づかれず、改善もされないし、事故が起きても運転ミス等で片付けられてしまっているのではないか、と考えさせられました。

 慣れ親しんだ場所での事故を防ぐためには、これが当たり前、という先入観を捨てて、もう一度その環境を再確認する必要があります。なかなか難しいところですが、当サイトでは、農作業現場の問題を見つけて改善するための「農作業現場改善チェックリスト」「改善事例」も公開していますので、これらのツールや事故対面調査結果などもご活用いただき、対策のヒントにしていただければと思います。

 

キーワード:事故/安全装置・対策/研究/乗用トラクター
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