農作業事故はどのくらい多いのか?(その2)
H28年3月 積 栄
2015年12月の同コラムで、農作業死亡事故がいかに多いかについて、企業の労災死亡事故件数に例えてみました。ここではさらに、他産業との比較や、機械の台数あたりの死亡事故件数を通して考えてみたいと思います。
図は、他産業全体、建設業、交通事故における就業者(交通事故は総人口)10万人あたり死亡事故件数を、農業と比較したものです。ご覧のとおり、建設業も含めて労働災害や交通事故全体が死亡事故を減らしてきているにも関わらず、農業では増加を続けており、今では農業で死亡事故に遭う確率は、他産業平均の約9倍、建設業と比較しても約2倍も多いことがわかります。2000年時点では建設業を若干下回っていたことを考えても、農作業事故の問題は、今世紀に入ってさらに大きく悪化してしまっている、と見るべきでしょう。
交通事故との比較では、人口比ではなく台数あたりの死亡事故件数で比較することもできます。乗用トラクターおよび自動車の10万台あたり死亡事故件数をそれぞれ計算した結果、2000年時点では自動車11.7件に対して乗用トラクターは6.5件であったのが、2012年には自動車は大きく死亡事故件数を減らして6.1件であった一方、乗用トラクターは逆に6.8件と増えており、逆転してしまっていました。乗用トラクターは自動車と異なり、運転する期間が限られることをあわせれば、もはや自動車よりもかなり死亡事故に遭う確率が高い乗り物だということになりそうです。
このように、他産業や交通事故と比較すると、農作業事故の重大性がよりわかりやすくなります。今後も機会を捉えて、現場に重大事故の多さを伝えていきたいと思います。