農作業安全コラム

一時停止線の向こうにあるものは

H29年5月 手島 司

 一時停止線のお話です。例えば乗用型トラクター(以下「乗トラ」)で公道を走行している時、逆三角形の赤い「止まれ」標識があれば、他の自動車やバイクなどと同じようにその足元の一時停止線の直前で一旦停止し、左右の安全確認を行ってから徐行して交差点や丁字路に進入しますよね。この「止まれ」標識や一時停止線については、環境が異なる二つの世界(狭い道路⇔幅広で交通量の多い危険な道路)を分けて、運転者に一旦周りの状況を確認させる時間を与えるための「境界線」という考え方ができると思います。

 このように、その前後で環境が大きく変わる境界線では、細心の注意や行動が必要だとすれば、農作業の現場では、その境界線は「水田・畑」⇔「進入・退出路」⇔「農道」などの間にあると考えられ、この線をまたぐと路面状況や傾斜、道幅や推奨される走行速度などが変わってきます。

 そこで、例えば水田や畑から出る時、農道から傾斜した進入路に入る時など、走行路面の状況が変わる境界線には、見えない一時停止線があると考えてみてはいかがでしょうか?「境界線の手前で一旦立ち止まり、乗トラなどの農業機械の状態がその先に待ち構えている走行環境に合ったものになっているのかどうか今一度確認する」ということが大事なことになってきます。例えば、乗トラで水田や畑から出る時には、走行速度段は低速になっているか、ブレーキは左右連結されているか、ハンドルを大きく切った時に前輪が速く回る設定になっていないか、作業機の高さが高過ぎないかなど、一旦立ち止まってからの確認をぜひお願いします。

 最後に、一時停止ということではないのですが、農道などの路肩も、その周辺で路面の傾斜が大きく変わるという意味では、注意を払うべき境界線と言えるかもしれません。走行時に路肩がきちんと視認できるように、日ごろから草刈りの実施と、路肩付近では特に慎重な運転を心がけましょう。


 

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