農作業安全コラム

その使用方法は正しいですか?

R1年12月 皆川啓子

 「農作業事故を起こさないようにするためには、どうしたらよいですか?」と聞かれることがあります。農作業事故に限らず、事故を起こしたいと思って起こしてしまう方はいらっしゃらないと思いますので、このような質問が出るのだと思うのですが、残念ながら算数のように「1+1=2」のような正解はありません。

 なぜならば、生産者さんの作っている作物、作業方法、作物の生育ステージ、作付けている圃場の状況、圃場までの移動手段や経路、天候等全てが同一になることはないためです。また、同一の生産者さんが、同じ圃場で同じ作物を作り続けていても、事故は起きてしまっています。なぜならば、生産者さん自身も年齢を重ねますし、体調も毎日一緒ではありません。

 では、何であれば変わらないかと考えたとき、使用している農業機械の正しい操作方法はかわらないと言えます。建設機械で使用する機械の取扱については、必ず講習を受けてから使用しなければいけません。農業機械についてはどうでしょう?乗用型の農業機械は、公道走行をするためには小型特殊や大型特殊免許が必要ですが、作業機についてはいかがでしょうか? 使用する作業機によっては技能講習や安全講習が必須となっているものもありますが、私有地での使用ということで受講されていない方もいらっしゃいます。受講していなくても、購入はできます。自動車も、運転免許を持っていなくても購入はできます。農業機械に限ったことではありません。しかしながら、新品でも中古でも購入する際に、十分な取扱説明を受けていますか?正しい操作方法を知ってから使用していますか?我流で使っている方はいませんか?

 取扱説明書では、禁止されている事項をやっていたりする、ということが実はあったりします。例えば、刈払機で往復刈りしている、田植機を圃場から上げるときにウエイト代わりに人を乗せている、運搬車の荷台に人を乗せて圃場間移動をする、トラクターに乗るときにせがまれたので膝の上に子供を乗せる等は禁止されている事項です。みんなやっている、自分だけではない、と思っているかもしれませんが、正しい操作方法ではありません。禁止されているのには、理由があります。 実際に、例として挙げた禁止事項をやってしまったために起きてしまった重篤な事故の報告が毎年のようにあります。今まで大丈夫だったから、大丈夫とはなりません。なぜならば、先に記載したように全く同じ条件で同じように作業しているつもりでも、全く同じであることは無いからです。

 農業機械の安全講習後、「安全対策をするにはお金がかかる」ともよく言われます。痛ましい事故を一つでも起こさないようにするために、まずは使用している農業機械で禁止されていることが何なのか、シーズンオフの今、取扱説明書にもう一度目を通して確認してみてはいかがでしょうか。これは、全くお金はかかりません。1人で読んでいると、見落としてしまうかもしれません。 作業を一緒にやる仲間と読み合わせを行い、お互いが認識し合い、注意し合うようになることで、より一層安全な作業につながることを願います。

 

キーワード:事故/安全装置・対策/乗用トラクター/刈払機/田植機/農用運搬車/運搬・移動
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