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土壌流亡の緩和手法と河畔林の緩衝機能評価


[要約]
作業機械の踏圧履歴が多いほど、土壌流亡量は増加したが、心破等の土壌流亡抑制効果が確認され、秋にプラウにより溝切りを行うことで、融雪期の流亡土量の大幅な減少効果が確認された。また林帯の大きな濾過能力が確認された。
北海道立中央農業試験場・農業土木部・農村環境科
[連絡先]01238-9-2001
[部会名]総合研究(農業物理)
[専門]農地整備
[対象]農業工学
[分類]指導
[背景・ねらい]
畑作丘陵地帯は、土壌流亡の被害で悩まされている。土壌侵食は営農上多大な損害を与えるのみならず、近年の環境保全の高まりから、水系への負荷など生態系に対する影響も問題となっている。本試験の目的は、土壌流亡を圃場において緩和する手法を確立し、また河畔林等の林帯が有する、圃場から系外への土壌流亡の抑制機能を明らかにすることである。
[成果の内容・特徴]
  1. 作業機械の踏圧履歴が多いほど、圃場の堅密度は増加し、圃場の浸入能は低下し、土壌流亡量は増加したが(図1)、作付け前の心土破砕と作付け後の畦間サブソイラを併用することで、圃場の土壌流亡緩和効果を、作付け後も維持出来る。(図2表1
  2. 降雪前にプラウにより溝切りを行うことで、凹部に集まる地表流を分散させてガリーの発達を緩和し、勾配の緩い溝に流れ込んだ表土が溝に堆積する事で、土壌流亡の緩和効果が明らかとなった(表2)。そしておおむね0.5〜1%程度の溝勾配が効果的である。
  3. 融雪前に、心土破砕を施工する事でも、融雪期のガリー侵食が緩和され(表2)、また融雪後も心土破砕の膨軟効果の持続性のあることが確認された。
  4. 降雨初期の弱い雨量強度では、林帯での地下浸透量が多かったが、降雨後期に雨量強度が上昇するにつれ、林帯での浸透量が減少していった。
  5. 林帯での濾過土砂重は、流れ込んだ土砂重と正の相関が確認され(図3)、土砂濾過率は林帯に流れ込んだ地表流量と、負の相関が確認された。(図4
  6. 粗粒質画分(粗砂)は、そのほとんどが植生濾過により濾過されていたが、細粒質画分(粘土)は、全体的に浸透濾過の占める割合が高い。
  7. シミュレーション結果では、シルト以上の粒径の土砂の除去に関して、林帯の濾過機能は、林帯と同面積の沈砂池よりさらに大きな機能がある。
[成果の活用面・留意点]
  1. プラウで溝切りすることによって、融雪期のガリー侵食を緩和する工法は、溝切りしたあとの流末排水の整備がされている必要がある。
  2. 今回調査した林帯の林床はササである。
  3. 適応地帯は多雪地帯に限定する。

平成11年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:土壌流亡の緩和手法と河畔林の緩衝機能評価(農村地帯における河畔環境の再生に関する研究)(指導参考)
[その他]
研究課題名:	農村地帯における河畔環境の再生に関する研究
予算区分:	共同研究
研究期間:	平成11年度(平成9〜11年)
研究担当者:	長谷川昇司
発表論文等:	共同研究報告書 農村地帯における河畔環境の再生に関する研究(平成9年度・平成10年度・平成11年度)

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