早熟、多収、良食味の水稲新品種候補系統「上育427号」
- [要約]
- 水稲「上育427号」は、北海道で中生の早に属する早熟で良食味の粳種である。穂数確保が容易で、多収である。「きらら397」と「あきほ」の一部に替えて作付けすることにより、寒地における産米の食味向上と一層の安定生産を図る。
北海道立上川農業試験場・研究部・水稲育種科
[連絡先]0166-85-2200
[部会名]作物
[専門]育種
[対象]稲類
[分類]普及
- [背景・ねらい]
- 北海道における主要粳品種は「きらら397」、「ほしのゆめ」、「あきほ」及び「ゆきまる」であるが、首位の「きらら397」の作付け率は約60%で作付基準の40%を大きく越えている。また、第2位の「ほしのゆめ」は約30%ですでに当初の普及予定面積に達している。そこで、「きらら397」と「ほしのゆめ」の過作を抑止し、道産米の食味水準の向上と生産の安定化を図るために、「きらら397」よりも早熟で耐冷性が強く、「あきほ」よりも多収で、食味が「ほしのゆめ」並に良好な品種の育成に取り組んできた。
- [成果の内容・特徴]
- 水稲「上育427号」は、上育418号(ほしのゆめ)/空育150号(あきほ)の交配組合せから選抜された中生の良食味粳系統である。
- 育成地における出穂期は、ほぼ「きらら397」、「あきほ」、「ほしのゆめ」並であるが、全道的には、「あきほ」よりやや遅く、「きらら397」、「ほしのゆめ」よりやや早い中生の早に属する。
- 成熟期は「あきほ」並かやや遅く、「きらら397」よりも3日以上早い。
- 稈長は「きらら397」、「あきほ」並、穂長は「きらら397」よりも短く、穂数は「きらら397」、「あきほ」、「ほしのゆめ」よりも多く、草型は穂数型である。
- 障害型耐冷性は“やや強〜強”で「きらら397」に優る。いもち病真性抵抗性は“Pia、i、k”と推定され、葉いもち抵抗性は“やや弱”、穂いもち抵抗性は、“やや弱〜中”と「きらら397」並で、「ほしのゆめ」にやや優る。
- 収量性は「きらら397」には劣るものの、「あきほ」、「ほしのゆめ」よりも多収である。
- 玄米品質は「きらら397」、「あきほ」並で、粒厚は「ほしのゆめ」よりも厚い。
- 食味は「あきほ」、「きらら397」に優り、「ほしのゆめ」に近い良食味である。
- [成果の活用面・留意点]
- 上川(風連以南)、留萌(中南部)、空知、石狩、後志、日高、胆振、渡島および桧山の各地帯に適応し、「きらら397」と「あきほ」の一部に替えて、13、000haの普及が見込まれる。
- 割籾の発生が多いので、斑点米等の被害粒を出さぬよう病害虫防除を徹底するとともに、種籾生産
- にあたっては脱ぷ粒が発生せぬよう注意する。
- いもち病抵抗性と耐倒伏性が不十分なので、適正防除を徹底するとともに、多肥栽培は厳に慎む。
- 「あきほ」、「ほしのゆめ」に比べて耐冷性がやや劣るので深水潅漑を励行する。
- 平成11年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
- 課題名:水稲新品種候補系統「上育427号」(普及奨励)
- [具体的データ]
- 表
- [その他]
-
研究課題名:超早生耐冷性品種の育成
予算区分 :補助指定
研究期間 :平成11年度(平成5年〜11年)
研究担当者:菊地治己、前川利彦、田中一生、木内均、平山裕治、木下雅文、佐々木一男、新橋登、
丹野久、佐藤毅、吉田昌幸、田縁勝洋
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