高製パン性春まき小麦新品種候補系統「北見春59号」


[要約]
春まき小麦「北見春59号」はハルユタカと比較して、赤かび病抵抗性に優れ、成熟期の穂発芽抵抗性はやや優れる。収量性は優れるが、うどんこ病抵抗性は劣る。製粉性はやや劣るが、製パン適性は優れる。
北海道立北見農業試験場・研究部・小麦科
[連絡先]0157-47-2146
[部会名]作物
[専門]育種
[対象]麦類
[分類]普及
[背景・ねらい]
春まき小麦の主要品種であるハルユタカは短強稈・多収品種として育成され、その当時作付けされていたハルヒカリ、農林61号に置き換わり、急速に普及した。しかし、ハルユタカは赤かび病抵抗性、穂発芽抵抗性が弱く、成熟期前後に降雨が続くと穂発芽が発生し、近年、生産が安定せず、作付けも減少してきている。しかし、春まき小麦は蛋白含量が高いため、製パン用のみならず、醸造(醤油)用としての需要が生産量を大幅に上回っている。そのため、ハルユタカより、安定的に多収で、製パン性の優れる品種の育成が強く望まれている。
[成果の内容・特徴]
  1. 「北見春59号」は、昭和61年度に、良質、穂発芽性難の北系春575(後の、春のあけぼの)を母とし、多収の北系春533を父として人工交配を行い、選抜、固定を図ったものである。
  2. 出穂期、成熟期とも「ハルユタカ」とほぼ同程度の中生種である。
  3. 稈長、穂長とも「ハルユタカ」とほぼ同程度である。穂数は「ハルユタカ」よりやや少ない。
  4. 「ハルユタカ」より多収で、千粒重も「ハルユタカ」より大きい。リットル重は「ハルユタカ」と同程度で、外観品質は「ハルユタカ」より優れる。
  5. 赤さび病抵抗性は「ハルユタカ」よりやや劣る。うどんこ病抵抗性は「ハルユタカ」より劣る。赤かび病抵抗性は「ハルユタカ」より優れる。
  6. 穂発芽性は「ハルユタカ」よりやや優れる。
  7. 原粒灰分は「ハルユタカ」より低く、蛋白含量は「ハルユタカ」とほぼ同程度である。製粉歩留は「ハルユタカ」よりやや低く、ミリングスコアは「ハルユタカ」と同程度であり、製粉性は「ハルユタカ」よりやや劣る。
  8. 製パン適性は「ハルユタカ」より優れる。
[成果の活用面・留意点]
  1. 「北見春59号」を北海道内のハルユタカの一部に置き換えて栽培することにより、北海道産春まき小麦の安定生産を図る。
  2. 融雪後できるだけ早期に播種し、成熟期を早め、収量・品質の向上を図る。穂発芽性はやや難であるが、刈り遅れによる品質低下や黒目粒発生の増加が懸念されるので、適期収穫を励行する。うどんこ病に対する抵抗性は不十分なので、適期防除に努める。

平成11年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:春まき小麦新品種候補「北見春59号」(普及奨励)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:新品種育成試験、良質パン用雨害耐性春播小麦品種の育成
予算区分  :指定試験、新品種緊急開発
研究期間  :平成11年度(昭和61年〜平成10年)
研究担当者:柳沢 朗・天野 洋一・田引 正・谷藤 健・吉村 康弘・中道 浩司・
            土屋 俊雄・前野 眞司・荒木 和哉・三上 浩輝・牧田 道夫・
            佐々木 宏

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