豚マイコプラズマ肺炎ワクチンによる肥育豚の発育改善


[要約]
豚マイコプラズマ肺炎(MPS)不活化ワクチンによる肥育豚の発育改善を日増体量および出荷日齢などから検討した。本ワクチンの接種は肥育豚の発育を改善し、出荷日齢を短縮する。
北海道立滝川畜産試験場・研究部・衛生科、養豚科
株式会社科学飼料研究所・ワクチンセンター・製剤課
[連絡先]0125-28-2211
          043-486-5640
[部会名]畜産・草地(畜産)
[専門]診断予防
[対象]家畜類
[分類]指導
[背景・ねらい]
MPSはMycoplasma hyopneumoniae(Mhp)を原因菌とする豚の代表的な呼吸器病で、肥育豚の発育を遅延したり、他の呼吸器感染症を増悪するなど、養豚の生産性を低下させる主要因である。MPS不活化ワクチンによる肥育豚の発育改善を明らかにするために、肺病変保有状況の異なる2農場において日増体量および出荷日齢などを検討した。
[成果の内容・特徴]
  1. 滝川畜試において冬期間に肥育された豚を用いた検討では、ワクチン接種により肥育前期、後期ともに順調に発育し、肥育終了日齢が4.9日間短縮した。また、MPS様肺病変面積が大きいと肥育後期の日増体量が低下する(表1)。
  2. MPSが多発している養豚農場における検討では、ワクチン接種により離乳時から10週齢時までの日増体量は大きくなり、また、出荷日齢が5.3日間短縮した(表2)。
  3. ワクチンを子豚全頭に接種するMPS対策により8週齢時体重が大きくなり(表3)、子豚期の発育改善がみられ、肥育開始(30kg)時日齢は7.0日速まった。また、肥育期間を通じての日増体量は大きくなり、肥育日数は5.1日間短縮し、肥育終了日齢は12.1日間速まった(表4)。
  4. MPS対策において本不活化ワクチンは有効である。
  5. MPS不活化ワクチンの接種は、Mhp感染による肥育豚の発育低下を改善する。
  6. 各試験の結果をもとに試算したところ、肥育豚1頭当り295円から1、105円の経済効果が認められる。
[成果の活用面・留意点]
  1. ワクチンは生物製剤であり、獣医師の指示に従い、用法および用量のとおり使用する。
  2. 農場における肥育豚の出荷日齢、農場飼料要求率および肥育豚の死亡・淘汰率などを考慮して、ワクチンの利用を検討する。

平成11年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:豚マイコプラズマ肺炎不活化ワクチンによる肥育豚の発育改善(指導参考)
[その他]
研究課題名:ワクチンによる豚マイコプラズマ肺炎の予防
予算区分 :共同研究(民間)
研究期間 :平成11年度(平成9〜11年)
研究担当者:尾上貞雄・仙名和浩・梶野清二・裏 悦次・大原益博
      小此木 博・小川哲夫

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