黒毛和種去勢育成牛に対する濃厚飼料の給与水準


[要約]
濃厚飼料を多給しても育成期の発育は向上せず、肥育成績も高まらなかった。給与する濃厚飼料のCP含量を25%まで高めると乾草摂取量が向上した。良質乾草を自由採食させる場合、3か月齢で離乳した去勢育成牛にはCP25%の濃厚飼料を50gDM/MBSで給与するのが適当である。
北海道立新得畜産試験場・家畜部・肉牛飼養科
[連絡先]01566-4-5321
[部会名]畜産・草地(畜産)
[専門]飼育管理
[対象]家畜類
[分類]指導
[背景・ねらい]
肉用牛では5〜6か月齢まで授乳しているのが一般的であったが、近年では3〜4か月齢程度で離乳し、早くから固形飼料を給与する育成が行われるようになってきた。しかし早期離乳した育成牛に対する飼料給与技術は確立していない。そこで本成績では、3か月齢で離乳した黒毛和種去勢牛の育成期における濃厚飼料の給与水準および粗タンパク質含量の影響について検討した。
[成果の内容・特徴]
  1. 3か月齢で離乳した黒毛和種去勢牛15頭を用い、日本飼養標準から算出したDG0.9kgに要するTDN量の95%に相当する濃厚飼料を給与する区(HC区)、70%に相当する濃厚飼料を給与する区(MC区)、45%に相当する濃厚飼料を給与する区(LC区)の3水準設けて9か月齢まで試験を行った結果、平均日増体量および体高の発育は、LC区で低くなる傾向にあった。濃厚飼料摂取量は、HC区が65.3gDM/MBS、MC区が50.7gDM/MBS、LC区が32.5gDM/MBSであった。乾草の摂取量はHC区からLC区へと高まる傾向にあった。
  2. HC区・MC区・LC区の牛を同一の方法で肥育した結果、枝肉重量はMC区が最も大きくなる傾向が見られた。A-4以上の上物率は、MC区が40%であったのに対してHC区とLC区では0%であった。以上の結果から、MC区レベルの濃厚飼料水準、すなわち約50gDM/MBSで育成した牛は、肥育期間における飼料摂取量の低下が少なく発育も良好であり産肉性にも優れた。
  3. 濃厚飼料の給与量を代謝体重(MBS)あたり50gDMとし、濃厚飼料の設定CP含量で25%(HP区)・20%(MP区)・15%(LP区)の3水準設けて試験を行ったところ、平均日増体量はHP区で大きくなる傾向にあった。乾草の摂取量は、濃厚飼料のCP含量が高まるにつれて増加する傾向を示した。血中UNは平均で12mg/dl程度であり(図2)、窒素の過剰摂取とはなっていなかった。したがって、濃厚飼料のCP含量を25%まで高めることは、去勢育成牛の乾物摂取量を向上させ増体を高める効果が認められた。
[成果の活用面・留意点]
  1. 粗飼料としてTDN60%程度の良質な乾草を細切して給与した場合の成績である。
  2. 市販の育成用配合飼料(保証成分でTDN71%およびCP17%程度のもの)を用いた場合の結果であるため、栄養価が著しく異なる濃厚飼料を使用する場合は注意を要する。

平成11年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:黒毛和種去勢育成牛(3か月齢離乳)に対する濃厚飼料の給与水準(指導参考)
[具体的データ]
図1 表1 表2 表3
[その他]
研究課題名:北海道型黒毛和種肥育素牛の育成法確立試験
予算区分:道単
研究期間:平成11年度(平成9年〜10年)
研究担当者:杉本昌仁
発表論文等:第37回肉用牛研究会大会・第55回北海道畜産学会大会

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