乳脂肪の脂肪酸組成の違いがラットの血清コレステロール濃度および高血圧症に及ぼす影響


[要約]
乳脂肪の脂肪酸組成は、高コレステロール・高脂肪食を摂取するウィスター系ラットの血清総コレステロール値に影響を与え、長鎖脂肪酸の多い乳脂肪に較べ短鎖脂肪酸の多い乳脂肪では血清コレステロール上昇効果が小さく馴化も早い傾向にある。乳脂肪の脂肪酸組成は、乳脂肪が持つ脳卒中易発症高血圧ラット(SHRSP/Izm)の脳血管障害を予防し寿命を延ばす効果に影響を与えない。
北海道立根釧農業試験場・研究部・酪農第二科
[連絡先]01537-2-2004
[部会名]畜産・草地(畜産)
[専門]食品品質
[対象]家畜類
[分類]研究
[背景・ねらい]
乳脂肪の脂肪酸組成の違いが生体に与える影響を明らかにするため、牧草サイレージ主体で飼養されている泌乳初期牛の牛乳から短鎖脂肪酸に富む乳脂肪(短鎖乳脂肪)を、泌乳後期牛から長鎖脂肪酸に富む乳脂肪(長鎖乳脂肪)を調製し、標準飼料に10%添加しラットに給餌して検討した。
高コレステロール・高脂肪食摂取時の血清コレステロール上昇効果は、ウィスター系ラット32頭を4群に分け、標準飼料に短鎖乳脂肪、長鎖乳脂肪、牛脂、ヤシ油をそれぞれ10%添加してコレステロール・コール酸と供に6週間給餌し、血清総コレステロール濃度に及ぼす影響を比較した。また、脳血管障害の予防効果は、脳卒中易発症高血圧ラット(SHRSP/Izm)20頭を3群に分け、標準飼料と標準飼料に短鎖乳脂肪と長鎖乳脂肪をそれぞれ10%添加した飼料を死亡時まで給餌し体重、血圧上昇および寿命に及ぼす影響を比較した。
[成果の内容・特徴]
  1. ラットにおける高コレステロール・高脂肪食摂取時の、脂肪の血清総コレステロール上昇効果はヤシ油が最も小さく、短鎖脂肪酸の多い乳脂肪、長鎖脂肪酸の多い乳脂肪、牛脂の順に上昇効果が大きい(図1)。
  2. 牛脂や乳脂肪では給餌期間の経過とともに血清総コレステロール上昇効果が減少する馴化がみられ、馴化に要する期間は短鎖脂肪酸の多い乳脂肪が最も短く、長鎖脂肪酸の多い乳脂肪、牛脂の順に長い(図1)。
  3. 脳卒中易発症高血圧ラット(SHRSP/Izm)の血圧の推移は、乳脂肪中の脂肪酸組成の違いに影響されない(図2)。
  4. 乳脂肪が持つ脳卒中易発症高血圧ラット(SHRSP/Izm)の脳血管障害を予防して寿命を延長する効果は、乳脂肪中の脂肪酸組成の違いに影響されない(図2)。
[成果の活用面・留意点]
特になし

平成11年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:生乳中の栄養・機能性成分の動態解明並びに乳脂肪組成がラットの生理・代謝に及ぼす影響(指導参考)
[その他]
研究課題名:高血圧ラット「SHR」を利用した飼養条件と牛乳の機能性品質との関連
      解明
予算区分:道単
研究期間:平成11年度(平成8〜10年度)
研究担当者:高橋雅信・糟谷広高・八田忠雄・芹川 慎
発表論文等:  なし

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