ねぎの根腐萎凋病の発生生態
- [要約]
- ねぎの根腐萎凋病は北海道の6市町で発生しておりFusarium oxysporumの新分化型の可能性が高い。変法駒田培地によって土壌中の病原菌密度の測定が可能で、土壌診断に利用できる。品種、根部浸漬剤等による本病の回避は困難であり、C/N比の低い未分解有機物は本病の発病を助長する。
北海道立道南農業試験場・研究部・病虫科
[連絡先]0138-77-8116
[部会名]生産環境
[専門]作物病害
[対象]茎葉菜類
[分類]指導
- [背景・ねらい]
- ねぎの根腐萎凋病の発生生態、品種間差等は未解明である。そこで、本病菌の発生生態を明らかにすることで防除対策の資料とする。
- [成果の内容・特徴]
- ねぎの根腐萎凋病は1994年に発見され、1999年までに今金町、栗山町、八雲町、大野町、旭川市、門別町で発生している。殆どが施設栽培のねぎでの発生であり、栽培経歴の長い今金町では、周年利用型ハウスの約70%に発生している。
- 根腐萎凋病菌の生育適温は25℃であり、発病に適した地温も25℃である(図1)。ねぎの生育は地温が20℃を越えると低下することから、温度の高い夏に減収が甚だしい。
- 根腐萎凋病菌の土壌からの分離は変法駒田培地(駒田培地のpHを6.0とし、抗菌性物質はストレプトマイシン300ppm、PCNB1000ppm、クロラムフェニコール300ppmを添加する)が利用でき、菌密度を測定することができる。変法駒田培地によって測定された病原菌数とねぎの発病には高い相関があり、ねぎの発病をある程度予測できる(図2)。
- 根腐萎凋病菌は簡易軟白ねぎのハウス土壌においては、深耕を行わない限り、地表下30cmまで分布している(表1)。これはねぎの根系分布と一致する。
- 根腐萎凋病は、接種試験において、ねぎ、たまねぎ、わけぎに発病が認められた。これはネギ萎凋病菌(Fusarium oxysporum f.sp.cepae)に一致するが、本病菌は乾腐症状を起こさないことから病原性は明らかに異なり、新分化型と考えられる。
- 品種利用によって根腐萎凋病の発病を回避することは困難である。
- C/N比の低い未分解有機物の施用は根腐萎凋病の発病を助長する。
- 試験を行った11薬剤の根部浸漬、土壌潅注によって本病の発病は軽減されない。
- [成果の活用面・留意点]
- 本成績は主に施設栽培におけるねぎの根腐萎凋病の被害軽減に活用する。
- 防除対策としては、すでに報告した土壌消毒(還元消毒またはダゾメット剤30kg/10a)を行う。また、軽減策としては土壌塩類濃度(EC)の低下につとめる。
- 平成11年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
- 課題名:ねぎの根腐萎凋病の発生生態(指導参考)
- [その他]
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研究課題名:ねぎの根腐萎凋病の発生生態
予算区分:道単
研究期間:平成11年度(平成9〜11年)
研究担当者:新村昭憲,坂本宣崇
発表論文等:
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