露地野菜地帯における硝酸態窒素負荷削減プログラム


[要約]
露地野菜地帯の窒素収支は収穫物として搬出される窒素量の約2〜4倍の投入超過で、多量の無機態窒素が残存する。これの回収には深根性畑作物の活用が期待できる。さらに、窒素流出量の削減には深根性畑作物の施肥改善、残渣、堆肥の肥料評価及び外部から搬入される鶏糞など中小家畜堆肥の削減が重要である。
北海道立中央農業試験場・環境化学部・土壌資源科、環境保全科、土壌生態科
[連絡先]01238−8−2001
[部会名]生産環境
[専門]環境保全
[対象]
[分類]指導
[背景・ねらい]
農業由来と考えられる地下水・水系の硝酸態窒素の汚染は露地野菜畑を中心に顕在化しつつある。そこで、露地野菜畑の窒素収支実態を調査し、硝酸態窒素流出を軽減しうる改善策を組み立て、既往の成果を併せた窒素流出削減のためのプログラムを作成する。
[成果の内容・特徴]
  1. 露地野菜畑では肥料、堆肥及び残渣窒素の合計した総窒素投入量は市場へ搬出される窒素量の約2〜4倍と大幅な投入超過であり、収穫後には多量の無機態窒素が残存する。
  2. 残存無機態窒素を回収するため、(1)各作物の窒素吸収根域を設定し、(2)秋期0〜40cm土層の無機態窒素含量から翌春期1m土層内の無機態窒素残存量の予測式を導出し、(3)深根性畑作物(秋まき小麦、てんさい)の効果的窒素施肥量を活用する(表1)。さらに、(4)露地野菜の適正窒素施肥量を算出するため、圃場での残存硝酸態窒素の簡易測定法を利用する(図1)。
  3. 農地からの窒素流出量を予測するため、農地への窒素投入量(肥料、堆肥及び残渣窒素)、市場への窒素搬出量、農耕期間(春期〜秋期)及び非農耕期間(秋期〜翌春期)の窒素流出率を変数とする「窒素流出モデル」が利用できる。

    年間窒素流出量=〔当年投入窒素総量1)×A2)/100〕
                   +〔前年投入窒素総量(kg/10a)−前年搬出窒素総量)×(1−B3)/100)×B3)/100〕
    1)当年投入窒素総量は当年施用窒素総量と前年残渣窒素量の合計値
    2)A:農耕期間の窒素流出率(%)
    3)B:非農耕期間の窒素流出率(%)

  4. 露地野菜年多回作地域における窒素流出量削減のための改善プログラムとして、(1)深根性畑作物、露地野菜の窒素施肥改善、(2)残渣窒素の肥料評価、(3)施用堆肥の窒素代替量、(4)堆肥投入量の削減の4項目に分け、それぞれの削減可能量を算出(表2)、「窒素流出モデル」に当てはめた結果、窒素流出量は現状に対して3〜14%、改善項目全体で42〜48%の削減効果が期待でき(図2)。さらに、この削減手法は露地野菜・畑作物輪作畑、たまねぎ畑にも適用できる(表3)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本成績で示した1m土層内の残存無機態窒素の予測、深根性畑作物に対する効果的窒素施肥量の目安は、冬季降水量の少ない(400mm以下)火山放出物未熟土地帯に限定する。
  2. 「窒素流出モデル」に必要な非農耕期間の窒素流出率は平成9年度指導参考事項を活用する。また、たまねぎ畑の適正窒素施肥量は平成7年度指導参考事項を活用する。

平成11年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:露地野菜地帯の硝酸態窒素負荷実態と流出削減プログラム(指導参考)
[その他]
研究課題名:硝酸態窒素の環境負荷の実態解明と軽減技術の開発 1.露地野菜地帯における環境負荷の実態解明と農地生態系活用による環境負荷物質の浄化
予算区分:補助(国費)
研究期間:平成11年度(平成7〜11年)
研究担当者:三木直倫、安積大治、須田達也
発表論文等:露地野菜年多作地帯における深根性畑作物を活用した硝酸態窒素の流出削減,日本土壌肥料学会講演要旨集,第46集,2000(掲載予定)

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