水田地帯における河川への硝酸態窒素負荷の実態と軽減対策
- [要約]
- 水田地帯での農耕地から河川への硝酸態窒素の流出量は少ないが、代かき排水時に一時的に多い。環境への負荷をさらに軽減するためには、(1)施肥後入水までの期間を短くすること(2)緩効性肥料の使用(3)側条施肥が有効である。
北海道立上川農業試験場・研究部・土壌肥料科
[連絡先]0166-85-2200
[部会名]生産環境
[専門]環境保全
[対象]稲類
[分類]指導
- [背景・ねらい]
- 水田は浄化機能を持っており、環境への負荷は少ないとされている。しかし、排水中には窒素や塩基等の肥料成分が含まれており、これらが周辺環境に負荷を与えている可能性がある。そこで、水田地帯における硝酸態窒素の河川への流出実態を把握し、水田からの硝酸態窒素の環境への負荷軽減を図る。
- [成果の内容・特徴]
- 地区全体(19,000ha)における硝酸態窒素の地目別の河川への流出量(5〜9月、3カ年平均)は、山林では−0.70kg/ha、農耕地では0.13kg/ha、集落では3.27kg/ha程度である(表1)。
- 農耕地からの硝酸態窒素の旬別収支をみると、5月に流出が多く、それ以外はほとんど流出していない(図1)。一筆水田でも同様に、5月の代かき排水時の流出分が明らかに多い。
- 施肥撹拌後、入水・代かきまでの放置期間が長くなると、硝酸化成により代かき排水時に硝酸態窒素の流出量が多くなる(表2)。
- 緩効性窒素肥料の使用や側条施肥により、代かき排水時の硝酸態窒素流出量は全層施肥に比べ減少する(表2、3)。
- これらの結果から、硝酸態窒素負荷軽減として、(1)施肥後速やかに入水・代かきを行うこと(2)代かき排水後に施肥を実施するペーストおよび粒状化成肥料による側条施肥(3)緩効性肥料の使用が有効である。
- [成果の活用面・留意点]
- 調査地区(19,000ha)は、林地41%、農耕地35%、集落等24%で構成され、農耕地の約90%が水田として利用されている。
- 窒素施肥量は「道施肥標準」、「土壌診断に基づく施肥対応」に準ずる。
- 平成11年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
- 課題名:水田地帯における河川への硝酸態窒素負荷の実態と軽減対策(指導参考)
- [その他]
-
研究機関:平成11年度(平成7〜11年)
研究担当者:田丸浩幸・三浦 周・稲津 脩・宮森康雄・長谷川進
発表論文等:
戻る