バイオガスプラントにおける効率的なメタンガス産出と脱硫


[要約] [キーワード] [担当]北海道開土研・農業開発部・土壌保全研究室、農業土木研究室
[連絡先]電話011-841-1754
[区分]北海道農業・総合研究
[分類]技術・普及



[背景・ねらい] [成果の活用面・留意点]
  1. 積雪寒冷な北海道においてもスラリ−状糞尿、固液分離後の液分(スラリ−)および尿溜め液を原料とし、原料投入や消化液の排出に支障がない構造のバイオガスプラントであれば、連続的な原料投入と所定温度の維持によりメタン発酵は順調に進行し、投入スラリ−1t当たりのメタンガス発生量は15〜18m3である(図1)。
  2. 室内試験で食品廃棄物の副資材としてのメタンガス産出効果はその組成により異なり(図2)、有機物当たりのメタンガス発生量は糞尿:0.23m3/kg、牛乳:0.82m3/kg、バタ−:0.89m3/kg、パン粉:0.87m3/kgである。バイオガスの発生量が大きく低下する投入限界量(全投入量に対する副資材量の割合)はバタ−で10%、パン粉で12%、蛋白質(プロテイン)で8%であり、N分の多い有機物で限界量が少なく、副資材の利用にあたっては注意を要する。
  3. 湧別の200頭規模の施設において、廃牛乳や給食残滓を副資材として投入すると、原料投入量当たりのメタンガス発生量は1.3〜1.4倍に増加する(図3)。
  4. 生物脱硫(湿式ガスホルダ−)と酸化鉄脱硫が直列に配置される別海施設では、脱硫後のバイオガス中の硫化水素濃度は数mL/kL以下である。ガスホルダー兼用の生物脱硫装置での脱硫効果はガス流入口と近接していたガス流出口を対向位置に移動した後、空気注入率5〜8%で脱硫効率の改善が認められるが安定していない。担体式生物脱硫装置では38℃に温度を保持し、空気注入率5〜8%で約85%の安定した生物脱硫率が得られる。
  5. 脱硫経費は、充分機能する生物脱硫施設を併設する方が酸化鉄脱硫単独の場合よりも安価であると試算される(表1)。前者の脱硫法ではイオウ資源の循環がなされる事もあり、生物脱硫の併用が望ましい。
[成果の活用面・留意点]
  1. バイオガスプラントの新規導入を計画あるいは検討する場合、既設のバイオガスプラントで効率的なバイオガス産出や脱硫法を検討する場合に、本成果は有効である。
  2. 副資材の利用にあたっては重金属などの有害物質を含有しないことを確認するとともに、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」や施設建設の補助事業制度等の関係法令の適用に留意して使用する必要がある。
  3. 長藁入り、固液分離後、及び裁断藁入りの固形糞尿をバイオガスプラントの受入槽に投入し原料とするには、受入槽での固形糞尿塊の破砕・分散に多大の時間・労力・機械力を要する。不充分な場合にはポンプ等の閉塞を招くため、固形糞尿をバイオガスプラントの原料として直接利用することは実用的ではない。
[具体的データ] [その他]
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