環境会計手法を用いた共同利用型バイオガスシステムの温暖化負荷削減効果


[要約] [キーワード] [担当]根釧農試・研究部・経営科
[連絡先]電話01537-2-2158
[区分]北海道農業・総合研究
[分類]技術・普及



[背景・ねらい] [成果の内容・特徴]
  1. 別海町にある試験研究用共同利用型バイオガスプラントは、10戸の農家が参加しており経産牛換算でおよそ1000頭分のふん尿を処理している。そこで温暖化ガスを対象にしたライフサイクルフロー(図1)を作成し、1年間のふん尿処理に伴って発生する温暖化負荷をLCAを用いて定量化したところ、およそ447t-CO2eq(表1左)となった。これは、プラント体制導入以前(堆肥処理・スラリー処理)の個別処理(表1右)に比べて45%の温暖化負荷削減効果があると考えられる。
  2. 作業過程別に見ると(図2)、共同利用型に見られるふん尿の大規模な搬出入は、ふん尿処理全体の中で温暖化に与える影響は低く、当プラントに特有の堆積発酵過程が最大の負荷発生源とわかる。従って共同利用型バイオガスプラントでは、搬入されたふん尿を可能な限りメタン発酵に供することが温暖化負荷削減に効果的と判断される。そのためにはプラントに破砕機を設置し、発酵槽への長ワラの混入を防止することや、敷料に使うワラ・麦稈の細断の徹底、距離が離れていても参加農家をスラリー処理形態のみに限定するなどハード、ソフト両面からの誘導が必要である。
    また、貯留槽を密閉構造にするなどして、貯留時揮散を抑制する施設を整備することも有効と考えられる。
  3. 以上の結果を踏まえ一般化するため、参加農家が全てスラリー処理であること、経産牛1,000頭規模の条件の下に共同利用型バイオガスプラントのモデルを組みLCAを行なった結果(表2左)、このモデルの共同利用型バイオガスプラントは、1年間のふん尿処理で326t-CO2eq、スラリー1tに対して13.7kg-CO2eqの温暖化負荷の放出があることが推定された。
  4. 比較対象として、個別型スラリー処理の経産牛100頭規模農家10戸分のふん尿処理を想定しLCAを行なった結果(表2右)、同683t-CO2eq、スラリー1tに対して28.8kg-CO2eqとなり、モデル化した共同利用型プラントは運転時にスラリー処理の場合の52%の温暖化削減効果があると計算された。
[成果の活用面・留意点] [具体的データ] [その他]
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