十勝地域大規模畑作専業経営における休閑緑肥の導入効果と定着条件


[要約] [キーワード] [担当]十勝農試・技術普及部・技術体系化チーム
[連絡先]電話0155-62-9836
[区分]北海道農業・総合研究
[分類]技術・普及



[背景・ねらい] [成果の内容・特徴]
  1. 4品輪作体系(従来輪作と称す)と休閑緑肥を組み込んだ5品輪作体系(休閑導入輪作と称す)の経済性を比較した(表1)。休閑導入輪作では経営耕地の20%に休閑緑肥を作付することとなるが,(1)10a当たりで比較すると,休閑導入輪作の所得は従来輪作対比89と19%の低下が見込まれ,(2)輪作1サイクル(従来輪作40aと休閑導入輪作50a)で比較すると,休閑導入輪作のほうが所得総額は若干高い。すなわち,経営耕地が一定のままで休閑緑肥を導入すると,農業所得は低下するものの,規模拡大にともなって導入することによって,農業所得に影響を及ぼさずに活用できる。ただし,新たな10aの拡大にともなう地代(借地の場合,おおむね8,000円/10a程度が想定される)は,この場合の所得格差1,057円を上回る。
  2. 対象地域を想定した経営モデルを策定し,経営耕地に10%休閑緑肥を導入した場合の収益性の変化を試算した(表2)。試算結果は,表1と同様であり,休閑緑肥の導入面積が大きいほど所得総額の低下額も大きい。ただし,農業所得総額と必要生計費,元利償還額とを比較すると,平均的には50ha経営であれば休閑緑肥を導入しても資金的なゆとりが生じることが見込まれる。また,40〜50ha程度の経営であっても,負債残高の少ないものや必要生計費の少ないものであれば同様に,休閑緑肥を導入しても資金的なゆとりが生じることが見込まれる。
  3. 休閑緑肥の導入経営(実証試験実施経営)を対象とした経営実態調査(n=9)によると,休閑緑肥の導入は短期の所得額を一定程度低下させることを是認して,長期の生産性向上を目指す経営行動であり,休閑緑肥を導入しても資金繰りの困難や生計費の圧縮を招かない資金的なゆとりが確保できることが,休閑緑肥の定着条件と判断される。したがって,休閑緑肥は,経営耕地規模が大きく,一定程度の農業所得を犠牲としうる経営が,土壌や輪作改善を通じ,長期的な生産性向上をはかる際に有効であると判断される。とりわけ規模拡大過程に活用が期待される。
[成果の活用面・留意点]
  1. 休閑緑肥の導入効果の計測にあたっては短期の増収のみを対象とし,長期の導入効果を評価していない。
  2. 対象地域(十勝地域周辺部畑作地帯)の単収水準,土地利用を想定した分析である。
[具体的データ] [その他]
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