ペレニアルライグラスから単離されたフルクタン合成酵素遺伝子
[要約]
ペレニアルライグラスから3種類のフルクタン合成酵素(6G-FFT、1-FFT、1-SST)の遺伝子が単離でき、これらの遺伝子は連鎖群3と7に座乗する。このうち,1-FFT遺伝子は低温馴化過程で発現が増加する。6G-FFT遺伝子の単離はイネ科植物で初めてである。
[キーワード]
飼料作物育種、ペレニアルライグラス、フルクタン合成酵素遺伝子、マッピング、機能解析、発現解析
[担当]北海道農研・作物開発部・イネ科牧草育種研究室、地域基盤研究部・越冬ストレス研究室
[連絡先]電話011-857-9273
[区分]北海道農業・基盤研究、作物・生物工学、畜産草地
[分類]科学・参考
[背景・ねらい]
寒地型イネ科牧草はフルクタン(フルクトースのポリマー)を茎葉に蓄積するが、その含量は越冬性とともに飼料品質の向上に深く関わっていることが知られており、フルクタン代謝に着目したゲノム解析は、越冬性に優れ、高品質かつ高機能なイネ科牧草品種の開発には極めて重要である。そこで、ペレニアルライグラスからフルクタン合成に関与する酵素遺伝子の単離、発現解析およびタンパク機能解明を行うとともに遺伝子のマッピングを行う。
[成果の内容・特徴]
- ペレニアルライグラスの低温馴化冠部組織由来のcDNAライブラリーから、既知のフルクタン合成酵素遺伝子と相同性が高い数個のクローン(prft)を単離し,形質転換酵母発現系を用いた機能解析から,prft1はフルクタン-フルクタン1フルクトース転移酵素(1-FFT)遺伝子,prft3はフルクタン-フルクタン6Gフルクトース転移酵素(6G-FFT)遺伝子及びprft4はスクロース-スクロース1フルクトース転移酵素(1-SST)遺伝子であることを同定した(図1)。
- 多様な構造が存在するフルクタンのうち,イヌリンネオシリーズあるいはレバンネオシリーズのフルクタンを合成する6G-FFT遺伝子の単離はイネ科植物では初めてである。
- 1-SSTおよび6G-FFT遺伝子は、葉・冠部組織で恒常的に発現するが、1-FFT遺伝子は低温馴化過程で著しく発現量が増加する(図2)。
- 1-FFT、1-SST遺伝子は第7連鎖群、6G-FFT遺伝子は第3連鎖群のそれぞれ上部に座乗する(図3)。
[成果の活用面・留意点]
- フルクタンの含量や重合度を改良した形質転換植物体の作成や選抜マーカー開発への参考となる。
- 遺伝子の低温誘導に関わる転写因子等の発現調節機構の解明が残されている。
[具体的データ]
[その他]研究課題名:フルクタンに関するゲノム情報を活用した高品質・高機能なイネ科牧草育種素材開発
課題ID:04-08-01-*-18-04
予算区分:科研費
研究年度:2002〜2004年度
研究担当者:山田敏彦、吉田みどり、田村健一、眞田康治
発表論文等:1)久野ら(2004)育種学研究6(別2):71
2)久野ら(2004)育種学研究6(別1):60
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