大玉で耐寒性の強いおうとう新品種候補系統「HC1」
[要約]
おうとう「HC1」は、6月下旬に収穫盛期を迎え、「佐藤錦」より数日早く収穫できる。果実は同時期に収穫できる品種に比べて大きい。耐寒性が「北光」並みに強く、S遺伝子型はS3S5でほとんどの栽培品種と交配親和性を有する。
[キーワード]
[担当]中央農試・作物開発部・果樹科
[連絡先]電話0123-89-2285
[区分]北海道農業・作物
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
平成16年で「佐藤錦」、「北光」、「南陽」がそれぞれ35%、33%、15%の栽培面積を占めており、このうち「佐藤錦」、「南陽」は増加傾向にある。しかし、「佐藤錦」、「南陽」は耐寒性が弱いため、各地で凍害の発生がみられる。また、「佐藤錦」と「南陽」は互いに交配親和性がないため、この両品種の栽植比率が高まることによって受粉環境が悪化し結実不良となる園地がみられる。そのため、耐寒性が強く、主要品種との交配親和性を有する品種の育成を目標とした。
[成果の活用面・留意点]
- おうとう「HC1」は「南陽」の自然交雑実生から選抜した系統である。
- 樹勢は強く、樹の生育は旺盛である。満開期は「佐藤錦」、「北光」より1〜3日早く、「南陽」より2〜5日早い。収穫盛期は6月下旬で、「佐藤錦」より数日早い。生産性は「佐藤錦」、「北光」並みで、「南陽」より高い(表1)。
- 果実は黄色い地色に赤く着色する。果実重は6.3〜8.1gで「佐藤錦」、「北光」よりも大きい。糖度は13.9〜15.3%、酸度は0.52〜0.64g/100mlで酸味をやや強く感じる(写真1、表1)。
- 耐寒性は「北光」並みに強い(表1)。
- 「佐藤錦」並みに裂果しやすい(表1)。
- S遺伝子型はS3S5であり、「佐藤錦」、「北光」、「南陽」に加えほとんどの栽培品種と交配親和性を有する。(表1、表2)。
[成果の活用面・留意点]
- 裂果防止のため雨よけ被覆を実施する。
- 「南陽」と同様に黄変落葉することがあるが、生育等には大きな影響はない。
平成16年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
おうとう新品種候補「HC1」(普及奨励)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:おうとう品種改良試験
予算区分:道費
研究期間:1990〜2004年度
研究担当者:井上哲也、村松裕司、吉田昌幸、稲川裕、内田哲嗣、来嶋正朋、沢田一夫
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