ダイズ茎疫病レース抵抗性の解析と評価法
[要約]
ダイズ茎疫病のレース特異的抵抗性を高精度、効率的に評価できる接種検定法を開発し、それを用いてマーカーの探索、抵抗性の育種素材の探索と作出をおこなった。
[キーワード]
ダイズ、ダイズ茎疫病抵抗性、培地挿芽接種法、育種素材
[担当]道立植物遺伝資源センター・研究部・資源利用科
[連絡先]電話0125-23-3195
[区分]北海道農業・作物
[分類]科学・参考
[背景・ねらい]
ダイズ茎疫病はPhytophthorasojaeによってひき起こされる水媒伝染性の土壌病害であり、近年転換畑へのダイズ作付けが増加するに従い発生が恒常化している。土壌病害のため薬剤防除が難しく、抵抗性品種の育成が求められている。しかし、従来の接種検定法では精度が不十分のため、個体単位での評価や初期世代での選抜ができなかった。また本病はレース分化が著しく北海道においても10レースが報告されているため、抵抗性育種には多数のレース抵抗性を効率的に評価する方法が不可欠であり、効率的で精度が高いレース抵抗性の評価法が求められていた。
本試験では精度と効率の高いレース抵抗性評価法を開発すると同時に、10レース中で最も多くの判別品種を侵すレースJを対象としてマーカーの探索と育種素材の探索、作出をおこなう。
[成果の内容・特徴]
- ダイズ茎疫病のレース特異的抵抗性について高精度、効率的に評価できる幼苗接種検定法(培地挿芽接種法)を開発した(図1、写真1)。
- 従来の爪楊枝穿刺接種法では感受性の大豆とレースの組合せでもエスケープが多く、判定精度が劣ったが、培地挿芽接種法ではエスケープが認められず(図2)、作業効率も高かった。
- 「トヨコマチ(レースJ感受性)」×「はや銀1(レースJ抵抗性)」(植交9911)のF2個体-F3系統を用いて、レースJ抵抗性のおおよその位置を明らかにした(図3)。
- レースJ抵抗性により遺伝資源4点および植交9911F64系統を新たに選定した。これらについて主要レースとされるA、DとGについて抵抗性の評価をおこなったところ、レースD、Aに対してはすべてが抵抗性であったが、レースG抵抗性を示したのは1系統のみであった(表1、表2)。
[成果の活用面・留意点]
- 本試験で開発した幼苗接種検定方法(培地挿芽接種法)は、育種、DNAマーカー探索、菌株のレース判定、品種系統の抵抗性評価等に利用できる。
- 本試験において開発された評価法はダイズ茎疫病のレース抵抗性について評価するものであり、圃場におけるダイズ茎疫病抵抗性の全てを評価するものではない。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:ダイズ茎疫病抵抗性の効率的検定法の確立
予算区分:道費(豆基)
研究期間:1999〜2004年度
研究担当者:手塚光明、田澤暁子
発表論文等:田澤(2002)作物学会・育種学会北海道談話会会報43:83-84
田澤・手塚(2003)日本育種学会第103回講演会要旨集:192
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