ポテトチップ用で中早生のばれいしょ新品種「北海89号」
[要約]
ばれいしょ「北海89号」は、中早生のジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持つチップ加工原料用である。翌年2月までの貯蔵に適し、チップカラーが「トヨシロ」より優れる。また、暖地春作のチップ原料として使用可能である。
[キーワード]
ばれいしょ、ジャガイモ、加工、ポテトチップ、ジャガイモシストセンチュウ
[担当]北海道農研・畑作研究部・ばれいしょ育種研究室
[連絡先]電話0155-62-9272
[区分]北海道農業・作物、作物・夏畑作物
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
チップ加工原料用として道内で7,498ha(H15)、春〜夏のチップ原料向けとして鹿児島県を中心に本州以南で2,316ha(H14)栽培されている主力品種「トヨシロ」は、貯蔵後のチップカラーが悪く、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持たない欠点がある。この欠点を改良した様々な品種が普及途上にあるが、「トヨシロ」並の熟期(中早生)でシストセンチュウ抵抗性を持つ品種は未だ存在しない。中早生で、チップカラーが良く、本州以南でも栽培可能な品種が求められている。
[成果の内容・特徴]
- 「北海89号」は、早生の「とうや」を母、高でん粉価の「83068C-51」を父とするジャガイモシストセンチュウ抵抗性系統間の交配集団から育成されたポテトチップ加工用の系統である。
- 北海道においては、「トヨシロ」と比べて、熟性は同じ中早生で、茎長は同程度、一個重はやや小さく、収量は同程度〜少なく、でん粉価は同程度である(表1)。
- ジャガイモシストセンチュウに対し抵抗性を持ち、汚染地での栽培では同線虫の密度を低減し、未発生地では汚染の拡大を未然に防ぐ効果がある(表2)。
- ポテトチップのカラーは、北海道産の貯蔵前後、鹿児島県産においても「トヨシロ」より良い(図1)。
- 休眠期間が中なので長期貯蔵には向かず、翌年2月までの貯蔵に適する(表2)。
[成果の活用面・留意点]
- 「トヨシロ」の一部に置き換え、当面は北海道の加工原料用ばれいしょ栽培地帯に普及する。
- 北海道で「トヨシロ」を秋播き小麦の前作に作付けしている地域では同様に栽培可能である。また、本州以南でも栽培可能である。
- 栽植密度に対する反応が大きく、疎植は収量低下の度合いが大きいので避ける。
- 「トヨシロ」より打撲に弱いので、収穫や移送時に打撲を与えないように注意する。
- 目数が少ないので、種いもを切断する場合は頂芽の位置に十分注意する。
平成16年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「ばれいしょ新品種候補「北海89号」」(普及奨励)
[具体的データ]
[その他]研究課題名:ばれいしょ高品質優良品種の育成
課題ID:04-03-02-01-13-04
予算区分:交付金
研究期間:1991〜2004年度
研究担当者:高田明子、森元幸、小林晃、津田昌吾、高田憲和、梅村芳樹、中尾敬、吉田勉、木村鉄也、米田勉、百田洋二、串田篤彦、植原健人
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