春・秋の収量性と越冬性に優れるオーチャードグラス新品種「北海29号」
[要約]
オーチャードグラス「北海29号」は、早生で越冬性に優れる。1番草と4番草が多収で、早春から晩秋まで利用できる。3年目収量は高い。北海道および東北北部に適応し、採草・放牧に利用できる。
[キーワード]
飼料作物育種、オーチャードグラス、早生、越冬性、季節生産性
[担当]北海道農研・作物開発部・イネ科牧草育種研究室
[連絡先]電話 011-857-9273
[区分]北海道農業・作物、畜産草地
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
利用期間の拡大による自給飼料増産および収穫時期の分散のためには、出穂の最も早い早生のオーチャードグラスを草地に導入することが有効である。既存の早生品種は、越冬性、収量性および季節生産性に欠点がみられる。そこで、寒地・寒冷地向けに越冬性および春と秋の収量性に優れる新品種を育成する。
[成果の活用面・留意点]
- 5栄養系の組み合わせによる合成品種である。
- 出穂始は全場所平均で「ワセミドリ」より1日遅く、“早生”に属する(表1)。
- 収量性は、「ワセミドリ」と同程度かやや優れる(表1、2)。1番草収量が「ワセミドリ」よりやや優れ、4番草収量は優れる(表3)。3年目収量の前年比が「ワセミドリ」より高く、年次による収量の落ち込みが少ない(表1)。
- 越冬性と早春の草勢は「ワセミドリ」より優れる。耐寒性は“やや強”、耐病性(雪腐病総合判定)は“強”でいずれも「ワセミドリ」より優れる(表1)。秋季は急速に耐凍性が高まる(図)。
- 多回刈適性は「ワセミドリ」よりやや優れる(表1)。
- すじ葉枯病および葉枯れ性病害抵抗性は「ワセミドリ」と同程度である。黒さび病抵抗性はやや劣る(表1)。
- マメ科率は年平均約20%を維持し、混播適性は同程度である(表1)。
- 放牧における利用率は「ワセミドリ」と同程度で、放牧適性は同程度である(表1)。
- 1番草草丈は「ワセミドリ」と大差なく、草型は“立型”である(表1)。
- 耐倒伏性、飼料成分、採種性は、「ワセミドリ」と同程度である(表1)。
[成果の活用面・留意点]
- 普及対象地域は北海道全域と東北北部。普及見込み面積は12,000ha。「ワセミドリ」および「キタミドリ」と置き換える。原種を家畜改良センター十勝牧場で先行増殖中である。平成20年頃に市販開始予定。
- 採草および放牧に利用できる。
- 黒さび病抵抗性がやや劣るので、発生した場合は早めに収穫する。
平成16年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
オーチャードグラス新品種候補「北海29号」(普及奨励)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:オーチャードグラスの高品質・多収・環境耐性品種の育成
課題ID:04-03-04-(02)-07-04
予算区分:交付金
研究期間:継1994〜2005年度
研究担当者:眞田康治、山田敏彦、田村健一、高井智之、中山貞夫、水野和彦、大同久明
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