事例分析から見た集約放牧レイアウト作成のための留意点
[要約]
北海道における放牧地のレイアウトでは飲水施設および庇陰林が十分な事例は少なく、飲水・庇陰・補助飼料採食で通路の使用頻度が高まっている。集約放牧レイアウト作成のため、現状のレイアウト事例を引用する様式で留意点を示した。
[キーワード]
[担当]北海道農研・総合研究部・総合研究第3チーム
[連絡先]電話0155-62-9286
[区分]北海道農業・畜産草地、共通基盤・総合研究、畜産草地
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
放牧を導入するに当たり、放牧地や牛舎、通路、飲水場などのレイアウトは、牛群の省力管理と草地の効率的利用に重要な要素となる。そこで、主に十勝地域を対象に、搾乳牛を小牧区で放牧している酪農家39例について、放牧地、牛舎、通路、飲水場などのレイアウトの実態を把握し、レイアウト作成に役立てる。
[成果の活用面・留意点]
- 調査事例の1頭あたり放牧専用地面積は0.24ha、兼用地も含めた放牧地面積は0.35haで(表1)、概ね0.2ha/頭以下と狭い事例では、放牧時間中も牧区の出入り口を開放し、放牧牛にパドックで自由にサイレージや乾草を採食させている場合が多い。水槽をすべての牧区で飲水可能なように配置している事例は39例中12例と少ないが、放牧頭数が概ね70頭以上では各牧区に配置している。庇陰林については各牧区に配置した事例は少ない。このような補助飼料採食、飲水・庇陰で通路の使用頻度が高まっている。
- 牛舎と放牧地の間の移動の際に一般道路を通行する事例は約3分の1と多い。また、1事例あたり25頭〜70頭が通行している。一般道路による草地の分断は、交通量が多い場合、放牧地を拡大できない理由の一つとなっている。
- 飲水施設および庇陰林の配置が十分な事例は少なく、また、各酪農家はそれぞれ立地条件が多様である。そこで、現状の事例を参照にする様式でレイアウト作成のための留意点をまとめた(表2)。
- 表2では、チェックする項目について関係するレイアウトの具体例(事例(1)は現在と以前のレイアウト、(2)から(17)は現在のレイアウト、本文では図1の事例(1)以外は省略)を示すとともに、対応を記載している。
- 競合するチェックポイントについては重要度に応じて選択する。事例(1)では、以前は牧区が細長く採食ムラが問題になり、また、通路が日陰で放牧地より低かったので、現在は通路を中央にして、牧区を2列とする縦横差を小さくした配置としている。一方、この配置では北側の牧区で日陰がなくなっている。
[成果の活用面・留意点]
- 事例を引用することでレイアウトを作成する際にチェックポイントを検討しやすい。
[具体的データ]
[その他]研究課題名:集約放牧のためのレイアウト及び放牧計画の策定
課題ID:04-05-04-03-18-04
予算区分:交付金(集約放牧)
研究期間:2003〜2007年度
研究担当者:篠田 満、梅村和弘、須藤賢司、松村哲夫
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