乳牛における繁殖機能の発達と初産分娩月齢の早期化
[要約]
乳牛の初産分娩を早めるには8ヶ月齢までの発育が重要で、良好に発育した育成牛は8ヶ月齢で春機発動(体重約260kg)、11ヶ月齢までに性成熟に至り12ヶ月齢には授精可能となる。また、受胎後の飼養管理が適切であれば、21〜24ヶ月齢で分娩しても初産次成績に大きな問題はない。
[キーワード]
乳牛、繁殖、育成牛、春機発動、性成熟、授精開始、初産分娩
[担当]根釧農試・研究部・乳牛繁殖科
[連絡先]電話01537-2-2042
[区分]北海道農業・畜産草地
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
乳用後継牛では乳牛更新の効率化のため初産分娩月齢の短縮ならびに経営内の省力化が求められている。これまで、育成期の発育を向上させて15ヶ月齢で受胎させる飼養法(新得畜試・根釧農試、1999)が提示されている。しかしながら、繁殖面から見た授精開始時期については検討されていない。本課題では、育成牛の体格発育と繁殖機能発達との関係、および近年増加しつつある哺育育成預託システムにおける育成牛の繁殖成績、ならびに初産次の繁殖および泌乳成績の実態等から初産分娩月齢の早期化を検討する。
[成果の活用面・留意点]
- ホルスタイン種雌牛では、8ヶ月齢時の体重が263±27kg、体高が117.0±3.5cmと良好に発育した場合には8ヶ月齢で春機発動(初回排卵)、11ヶ月齢で性成熟(発情徴候の明瞭化)に至り、12ヶ月齢には授精可能となる(図1、図2)。春機発動の時期は、発育が良好なもので早まるが、8ヶ月齢より早くなることはない。しかし、8ヶ月齢までの発育が停滞すると、春機発動時期は遅れる(図1)。
- 育成牛の発育を向上させ、体高125cm、体重350kgに到達する月齢を14ヶ月齢から12ヶ月齢に短縮して授精開始を早めることにより、受胎月齢は13.6ヶ月齢と早期に受胎させることができる(表1)。また、分娩月齢が24ヶ月齢未満の牛においても、受胎後の発育が良好であれば、24ヶ月齢以上の牛に比べ分娩事故が多発することはなく、分娩後に良好な繁殖成績が期待できる(表2)。
- 乳用後継牛を哺育期から預託されている2育成牧場(E牧場・N牧場)では、育成期に日増体量が0.9kg程度と良好に発育させており、このような育成牛に対して早期に授精を開始することで、13〜15ヶ月齢での受胎が可能となる(表3)。
- 2育成牧場に哺育育成預託していた9農場における初産次成績の調査から、良好に発育した育成牛では21〜24ヶ月齢で初産分娩しても分娩後の繁殖成績、泌乳成績に悪影響は見られない(表3)。
[成果の活用面・留意点]
- 本成績は、地域預託システムはもとより、自家育成の乳用後継牛にも適用できる。
- 初産分娩を早期化した乳牛における連産性については未検討である。
平成16年度農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「乳牛における繁殖機能の発達と初産分娩月齢の早期化」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]研究課題名:子牛の哺育育成部門専門分化による初産分娩までの育成期間短縮をめざした地域預託システムの確立
予算区分:国補(地域基幹)
研究期間:2000〜2003年度
研究担当者:草刈直仁、大滝忠利、小山毅、出岡謙太郎
発表論文等:なし
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