乳用雄肥育牛における内蔵廃棄低減のための指針
[要約]
乳用雄肥育牛に多発する胃炎・肝膿瘍・横隔膜炎による内臓廃棄を低減するためには、育成期から仕上期まで乾草1kg/日程度を確実に摂取させる必要があり、そのためには一頭当り飼槽幅や一群頭数を適正に保ち、採食環境を整えることが重要である。
[キーワード]
[担当]道立畜試・畜産工学部・代謝生理科
[連絡先]電話01566-4-5321
[区分]北海道農業・畜産草地
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
安全・安心な食肉に対する消費者ニーズの高まりから、疾病のない肉牛からの牛肉生産が求められている。そこで、乳用雄肥育牛に多発している胃炎、肝膿瘍および横隔膜炎による内臓廃棄について、生産現場での飼養管理上の要因を明らかにし、内臓廃棄低減の指針を提示する。
[成果の内容・特徴]
- 乳用雄肥育牛に多発している胃炎・肝膿瘍・横隔膜炎による内臓廃棄は第一胃炎・第一胃不全角化症・肝膿瘍症候群およびこれから併発した横隔膜炎によって発生している。
- 胃炎・肝膿瘍・横隔膜炎の初期疾患である第一胃不全角化症は、濃厚飼料多給の肥育期から仕上期に乾草1kg(/日)程度の摂取によって改善可能である(表1、2)。
- 群飼いされている乳用雄肥育牛は19か月齢の体重別に内臓廃棄の発生を調べると、高体重群に少なく、低体重群に多い。また、日増体量との関連でも育成期から仕上期まで低増体群の廃棄率が高く、その傾向は発育時期とともに高まる(表3)。内臓廃棄は群飼いでの採食競争によって粗飼料不足となった低増体牛に発生が多く、その低減には採食環境の改善が必要である。
- 同じ飼料構成、給与方法で肥育されている乳用雄肥育牛について、飼料採食環境を改善することで、内蔵廃棄は有意に減少する(表4)。採食環境の改善は牛群の体重斉一性で把握できる(表4)。
- 以上の知見に基づいた胃炎・肝膿瘍・横隔膜炎による内臓廃棄低減のためのチェックポイントを示す(表5)。
[成果の活用面・留意点]
- より健全な乳用雄肥育牛の飼養管理の参考になる。
- 乾草は嗜好性の良いものを細断し、濃厚飼料とともに混合給与する。切断長は15mm程度が望ましい。
平成16年度北海道農業試験会議成績会議における課題名および区分
課題名:乳用雄肥育牛における内蔵廃棄低減のための指針(普及推進)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:肥育牛における健康管理プログラムの作成
予算区分:道費
研究期間:2001〜2004年度
研究担当者:川本 哲、原 悟志、扇 勉、佐藤幸信、森 清一
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