黒毛和種牛の初乳成分と子牛への初乳給与法
[要約]
黒毛和種牛の初乳はIgG1濃度が高く、子牛への免疫賦与効果が高い。黒毛和種子牛への初乳給与は少なくとも生後6時間は母牛から自然哺乳させ、乳量が少ないと思われるときはホルスタイン種凍結初乳や初乳製剤を追加給与する。
[キーワード]
[担当]道立畜試・畜産工学部・感染予防科、家畜生産部・育種科、肉牛飼養科
[連絡先]電話01566-4-5321
[区分]北海道農業・畜産草地
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
子牛の疾病予防には、出生直後の適切な初乳給与により子牛へ十分な免疫を賦与することが重要であるが、特に黒毛和種牛では初乳についての情報は少なく、子牛への初乳給与法は十分に確立されていない。本課題では黒毛和種牛について、初乳成分と子牛への初乳給与法について検討し、黒毛和種子牛への初乳給与プログラムを提示する。
[成果の活用面・留意点]
- 黒毛和種牛の初乳はホルスタイン牛と比較して乳量は少ないがIgG1濃度が高く、子牛への免疫賦与の効果が高い(表1)。
- 黒毛和種子牛は生時体重の約10%の初乳を自力哺乳できる。出生後6時間以内にホルスタイン種牛凍結初乳1.5リットルを子牛に給与すると、子牛血中へ移行する免疫グロブリン量やIgG1の吸収率に差はない(表2)。
- 初乳製剤だけの給与あるいはホルスタイン種凍結初乳1リットルの給与では子牛血清中IgG1濃度は低く、黒毛和種牛の母乳を給与することにより、子牛へのIgG移行量が著しく上昇する(図1)。黒毛和種子牛への初乳給与プログラムは、少なくとも生後6時間、できれば24時間は母牛から自然哺乳させ、乳量が少ないと思われるときは、ホルスタイン種牛の凍結初乳または初乳製剤を追加給与するとよいと考えられる。また、ET子牛の場合は生後6時間以内にホルスタイン種初乳を体重の10%を目安に2〜3リットル給与する。
以上の成績より、黒毛和種牛の初乳成分と子牛への初乳給与量と給与までの時間などが明らかになり、黒毛和種子牛への初乳給与プログラムを提示した(図2、図3)。
[成果の活用面・留意点]
- 黒毛和種子牛への初乳給与プログラムは生産農場で活用できる。
- 初乳を介して子牛に感染する可能性のある病原体(ヨーネ菌、牛白血病ウイルスなど)があるため、母牛の健康状態に注意する。
平成16年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
課題名:黒毛和種牛の初乳成分と子牛への初乳給与法(普及推進)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:肉用子牛における下痢予防のための衛生管理技術
予算区分:道費
研究期間:2000〜2003年度
研究担当者:小原潤子、藤川朗、八代田千鶴、平井綱雄、扇 勉
発表論文等:小原ら(2001)北獣会誌、45(8)239.
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