高水分乳牛ふん尿堆肥化のための簡易な排汁促進法
[要約]
堆肥舎床面に溝切りとバーク敷設を行うことで、高水分乳牛ふん尿からの排汁を促がして水分を低下させ、腐熟を進めることができる。さらに堆肥舎やシート被覆堆肥盤での切返しを行うことで、堆肥は約半年で完熟に達する。
[キーワード]
家畜ふん尿、ふん尿処理、排汁、水分低下、腐熟、バーク敷設、溝切り
[担当]道立畜試・環境草地部・畜産環境科
[連絡先]電話01566-4-0622
[区分]北海道農業・畜産草地
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
高水分乳牛ふん尿の堆肥としての利用性を高めるため、簡易な手段による排汁促進、それによる水分低下をはかって、腐熟化と取り扱い性向上を進める。ここでは堆肥舎床面に溝切り、バーク敷設することの効果を明らかにする。併せて水分低下後の堆肥についてより一層の腐熟を目指し、堆積方法、切返し方法の影響を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
1)高水分ふん尿(堆積量約1.7トン)を堆肥舎にそのまま堆積した場合(1区)と比べ、排汁の流出路を設けるために、床面に10cm程度バークを敷設(2区)あるいは床面に溝を切り(3区)、それらの上にふん尿を堆積した場合では、排汁量は多くて水分減少率も高くなる。バーク敷設と溝切りを併用した場合(4区)では効果はより大きい(表1)。
2)実用規模(堆積量約35トン)においても、堆肥舎床面の溝切りとバーク敷設を併用(試験区)することで、溝無し・バーク無しの場合(対照区)よりも、約4カ月間の堆積で排汁量は約3倍に増加し、水分減少率は顕著に高くて、水分除去が進む(表2)。
3)試験区では対照区と比べて品温は高く(図1)、酸素消費量の低下やコマツナ発芽率の向上など腐熟が進む。また終了時の水分含量は77%と大きく低下して、取扱い性が改善される(表2)。
4)溝切りとバーク敷設の併用によって水分が低下した堆肥(試験区)は、その後の堆肥舎でのショベルローダ(A区)や改造マニュアスプレッダ(B区)の切返し、ないしシート被覆堆肥盤でのショベルローダ切返し(C区)により、約2カ月間の堆積で、一層の腐熟を進めることができる(表3)。また、改造マニュアスプレッダを切返しに用いることで、発熱が促進される(図2)。
5)従来のように、溝無し・バーク無しの堆肥舎堆積(対照区)、それに続く露天堆積でのショベルローダ切り返し(D区)では、腐熟は遅れる(表2、3)。
6)A〜C区の終了時の腐熟程度は、完熟の目標数値(乾物減少率が40%以上、酸素消費量が3μg/g・分以下、コマツナ発芽率が80〜90%以上とした)からみて、完熟に達したと判断される。7)バーク敷設量はふん尿量の約3%で、搾乳牛1頭・年当たりのコストは2,750円である。既存堆肥舎床面の溝切りはパドック用溝切り機が利用でき、そのコストは2,000円/坪+機械の回送費1万円/時間である。
[成果の活用面・留意点]
1)排汁促進のための堆肥舎は水勾配、排汁回収構造が前提となる。
2)本試験のデータは敷料が小麦稈(無細切)の場合である。
平成16年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「高水分乳牛ふん尿の簡易堆肥化技術」(普及推進)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:積雪寒冷地における乳牛ふん尿の簡易堆肥化技術
予算区分:受託(国費)
研究期間:2002〜2004年度
研究担当者:阿部英則、田村 忠、湊 啓子、渡部 敢、住吉正次
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