テンサイ黒根病の防除対策
[要約]
テンサイ黒根病の被害は内部腐敗の進んだ株で大きく、感染時期が早いほど内部腐敗を生じる。フルアジナム水和剤の100倍液の苗床土壌潅注は省力的で有効である。品種、薬剤、石灰資材の組み合わせた防除対策では、抵抗性品種の利用が最も効果が高く安定している。
[キーワード]
テンサイ黒根病(Aphanomycescochlioides)、抵抗性品種、苗床土壌潅注、腐敗株率、防除対策
[担当]十勝農試・作物研究部・てん菜畑作園芸科
[連絡先]電話0155-62-9834
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
テンサイ黒根病は、高温多雨年に多発し、テンサイ生産に著しい被害を与えている。本病に対する抵抗性品種の開発が進められ、また、防除のための薬剤が登録されている。そこで、本病の発生実態を検証するとともに、薬剤による防除法および品種、薬剤、耕種法を組み合わせた防除対策を検討する。
[成果の活用面・留意点]
- テンサイ黒根病の被害解析から、根表面の粗皮症状のみ(指数2以下)では、根重、根中糖分への影響はない。しかし、内部腐敗が進んだ株では糖分が低下し、品質を加味した糖量(修正糖量)の減少が顕在化するため、本病の被害は、主として腐敗株率(発病指数3以上の株率)によって評価できる(表1)。
- 殺菌枠による接種試験では、移植後の感染時期が早いほど内部腐敗を生じやすい。
- 本病に対する防除薬剤は、フルアジナム水和剤100倍液の3ℓ/u苗床土壌潅注が最も省力的で有効である。ただし、少発生条件では薬剤費に見合う効果が期待できない場合がある。
- 石灰資材の施用により腐敗株率の低下が認められる事例は多いが、発生状況や圃場条件によって効果が判然としない場合もある。
- 圃場の排水対策は、本病の発病を軽減させる傾向にある。
- 直播栽培、移植栽培の違いによる発生の多少には一定の傾向は見られない。
- 基肥の増肥や追肥は本病の発生を助長する傾向にあるので、施肥基準を遵守する。連作は本病の発生を高める傾向にあるので、適正な輪作を行う。
- 少〜中発生条件における品種、薬剤、石灰資材を組み合わせた防除対策は、抵抗性品種の利用が、最も効果が高く安定している。この抵抗性の利用は本病防除の基本となる(図1)。また、抵抗性の弱い品種では、薬剤処理の効果がみられる(図2)。石灰資材の施用は、いずれの事例においても明らかな防除効果が認められない(図3)。
[成果の活用面・留意点]
平成16年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「テンサイ黒根病の防除対策」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:てんさい黒根病の発生実態と防除対策
てんさい黒根病の発生実態と総合防除法の確立
予算区分:受託
研究期間:1998〜2004年度
研究担当者:有田敬俊、清水基滋、梶山努、田中文夫
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