テンサイ褐斑病菌のDMI剤に対する感受性低下の実態とその対応法


[要約] [キーワード] [担当]十勝農試・生産研究部・病虫科
[連絡先]電話0155-62-2431
[区分]北海道農業、生産環境
[分類]技術・普及



[背景・ねらい] [成果の内容・特徴]
  1. 道内各地から分離したテンサイ褐斑病菌に対するジフェノコナゾール剤のEC50を検定したところ、最小値は0.001ppm、最大値は2.768ppmである(表1)。
  2. 現在テンサイ褐斑病に農薬登録のあるDMI剤のEC50の最大値はジフェノコナゾールが最も低く、ビテルタノールが最も高い(表1)。各DMI剤のEC50値はいずれの組み合わせも高い相関が認められ、感受性の違いは交差する(表2)。
  3. ポット試験の結果によると、ジフェノコナゾールのEC50が1.0ppmを越える菌株は、薬剤の残効期間が短くなる傾向にある。このことから、このような菌株をここではDMI剤の低感受性菌と暫定的に呼称する。
  4. 同一菌株のジフェノコナゾール0.1ppm添加培地における菌糸伸長の薬剤無添加培地に対する相対生育度(RG(D:0.1))とEC50の対数値との間には高い相関関係が認められるので、感受性検定には簡便法としてRG(D:0.1)が利用できる。これによると低感受性菌は、RG(D:0.1)で70以上となる。
  5. 平成14〜16年に全道の各圃場から分離した全菌株についてRG(D:0.1)を調べると、低感受性菌が優占する圃場が散見された。また、枠圃場での試験結果から、低感受性菌は野外で越冬可能である。さらに圃場でDMI剤を連用すると、低感受性菌の分離率は明らかに高くなる(図1)。
  6. DMI剤と作用点の異なる薬剤との体系散布は、各薬剤の残効期間の違いのためDMI剤の連用より散布回数が1回程度多くなるが、低感受性菌の分離率はDMI剤の連用より低く(図2)、防除効果も同等か、やや優る。
  7. DMI剤の連用区の罹病葉を連年接種し、DMI剤を連用すると、3年目には初発時から低感受性菌が70%近くの高い割合で分離される。この年は、本病は甚発生であったが、体系散布ではDMI剤連用区より高い防除効果が得られた。
  8. 以上の結果から、DMI剤散布の防除効果を持続的に保つには、作用機作の異なる薬剤との体系散布が有効である。
[成果の活用面と留意点]
  1. 本試験の薬剤散布と低感受性菌分離率の調査は十勝農試場内の接種条件下で行った。
[具体的データ] [その他]
目次へ戻る