キャベツ害虫に対する交信攪乱剤の効果
[要約]
交信攪乱剤を道内のキャベツ栽培実態に合わせて評価したところ、コナガ幼虫数と被害の軽減効果は顕著ではないが、発生対応型防除を併用することで、防除回数の削減、または規格内品率を向上できる場合がある。
[キーワード]
コナガ、キャベツ、交信攪乱剤、アルミゲルア・ダイアモルア剤
[担当]道立花・野菜技セ・研究部・病虫科
[連絡先]電話0125-28-2800
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
道内のキャベツ栽培実態に合わせた減農薬栽培技術を確立するため、交信攪乱剤のコナガに対する発生・被害防止効果、およびその使用上の注意点を明らかにするとともに、性フェロモン成分の一部が共通するヨトウガ類への効果も調査する。
[成果の活用面・留意点]
- 場内(滝川市)で交信攪乱剤(アルミゲルア・ダイアモルア剤:AD剤)を2〜3haに処理した試験では、処理区のコナガ寄生虫数は、無処理区の50〜70%と少なくなる傾向がみられるが、調査区によって差があり無処理と変わらない場合もある(図1)。キャベツ被害は、処理区で無処理区に比べ若干軽減される。
- 水稲地帯の産地でAD剤を1-2haに処理した事例調査では、発生対応型の慣行防除において、処理ほ場の1作型あたりの薬剤散布回数は、無処理ほ場と同程度ないし1回少ない(図2)。処理ほ場のコナガによる規格外品率は、無処理ほ場より低い(図3)。
- AD剤の処理費用(8,100円/10a)は、薬剤散布回数では3〜4回分、あるいは、規格内品の増収率では約3%(収量4000kg/10a、単価70円/kgの場合)に相当する。
- 本試験のような処理条件(3〜5m/sの風速、1〜3haの処理面積)では、発生対応型防除でも薬剤散布回数の大幅な削減はできず、少発生年に1回程度の削減に止まる。ただし、コナガ被害の軽減により得られる商品化率の向上を考慮すると利用可能な場面がある。
- ヨトウガ、シロシタヨトウは、処理区の卵塊数や幼虫数は無処理とほとんど差が無く、AD剤による密度低下は困難である。
[成果の活用面・留意点]
- 交信攪乱剤(AD剤)の利用にあたり注意を要する事項として下記があげられる。
・交信攪乱剤の効果は、交尾阻害による密度抑制であるため、コナガ幼虫の防除は必要となる。
・コナガ幼虫が発生した後の処理は、効果が著しく劣るので、5月中下旬頃から設置する。
・強風条件や狭い面積での処理ほど効果が不安定になりやすいので、薬剤防除のタイミングを図るため、ほ場観察によりコナガおよび他害虫の発生状況の把握に努める。
・コナガ以外の害虫には、効果が無いので、従来どおり防除が必要である。
- 本試験は、風速が強めの試験条件で得られた結果である。
平成16年度北海道農業試験会議における課題名および区分
課題名:キャベツ害虫に対する交信攪乱剤の効果(指導参考)
[具体的データ]
[その他]研究課題名:交信攪乱剤を利用した減農薬技術(2)野菜・花きのコナガおよびヨトウガ類
予算区分:道単
研究期間:2001〜2004年度
研究担当者:橋本直樹、柿崎昌志
発表論文等:柿崎(2002)北日本病害虫研報53:213-215
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