道央転換畑における根粒着生不良大豆への窒素追肥による収量・品質改善
[要約]
大豆作付履歴がない転換畑で大豆を初作する場合、根粒着生不良となる可能性が高く、対策として開花期追肥(窒素量10kg/10a程度)により収量・品質を改善できる。黄化が顕在化する根粒形成期の追肥は倒伏や低タンパク化による豆腐加工適性の恐れがある。
[キーワード]
ダイズ、転換畑、根粒着生、窒素追肥、収量、タンパク質含有率、豆腐破断応力
[担当]中央農試・技術普及部・技術体系化チーム
[連絡先]電話0123-89-2001
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
転作大豆の増加に伴い顕在化した問題の一つに、根粒着生数が著しく少なく、生育中に葉が黄化する現象が挙げられる。根粒による固定窒素に多く依存する大豆は、根粒着生不良条件では収量・品質が低下することから、その対策として窒素追肥等の検討が必要である。
そのため、根粒着生不良圃場の実態調査を行い、根粒着生不良条件下における窒素追肥が大豆の収量・品質に及ぼす影響を検討した。
[成果の内容・特徴]
- 転換以前に大豆作付履歴がない転換畑で大豆を初作する場合、根粒形成期(6月下旬〜7月上旬、大豆1〜3本葉期)の個体当たり根粒数が10個未満の根粒着生不良圃場になる可能性があり、特に転換後1年目にその頻度が高い(表1)。
- 根粒形成期に根粒着生不良である場合、その後の生育経過において根粒数が大幅に増加することはなく、低い水準で推移する。
- 根粒着生不良圃場の大豆は、根粒着生圃場より収量及びタンパク質含有率が低い。
- 根粒着生不良圃場の大豆に対する窒素追肥(窒素量10kg/10a)の増収・タンパク質含有率向上効果は開花期追肥の方が高く(表2)、根粒形成期追肥は低タンパク化や倒伏を助長する場合がある。
- 追肥によるタンパク質含有率の変動は豆腐破断応力に影響する(図1)。
- 根粒着生不良圃場においては、開花期に窒素量10kg/10a程度の追肥を施すことにより無追肥区より収量・品質を改善できる。
[成果の活用面と留意点]
1)本成績は道央転換畑における根粒着生不良圃場(根粒形成期の個体当たり根粒着生数が10個未満)に適用する。
2)空知中央部・南部の「トヨムスメ」「スズマル」「ツルムスメ」による成績である。
平成16年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名及び区分
「道央転換畑における根粒着生不良大豆への窒素追肥による収量・品質改善」(普及推進)
[具体的データ]
[その他]研究課題名:田畑輪換を前提とした水田農業高度利用技術実証、田畑輪換を前提とした表層透排水改善技術と米・野菜等の高品質安定生産
予算区分:道費(事業)、国費受託(地域基幹)
研究期間:2001〜2004年度
研究担当者:鴻坂扶美子、吉良賢二、渡邊祐志、田中義則、寺元信幸
発表論文等:鴻坂ら(2004)日育・日作北海道談話会報45:83-84.
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