高温の堆肥化熱を利用したながいも用生分解性ネットの分解促進技術
[要約]
生分解性ネットごと茎葉を黄変期〜枯葉初期にロールベーラで梱包、大堆積してビニール被覆し、一次発酵温度を60℃以上の高温状態に保つ。次いで3回の切返し(2回目に米ぬか添加)を行い、ビニールで被覆して二次発酵させる。この操作で生分解性ネットの分解を促進できる。
[キーワード]
生分解性ネット、ながいも茎葉、梱包、ビニール被覆、米ぬか、堆肥化
[担当]十勝農試・技術体系化チーム
[連絡先]電話0155-62-2431
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
ポリエチレンネットを使用したながいも栽培では、茎葉と絡み合ったネットの廃棄物処理が収穫時に問題となっている。そこで、生分解性ネットを使用したながいも茎葉混合物のロールベール化による取り扱い性の向上を図り、堆肥化過程での高温の発熱を利用してネットの急速な熱崩壊と分解をもたらす堆肥化技術を組み立てる。
[成果の内容・特徴]
1)黄変期〜枯葉初期のながいも茎葉生分解性ネットごとロールベーラで梱包、尿素液添加とビニール被覆することで、一次発酵温度を60℃以上の高温状態に長期間保つことができ、内部に存在するネットは崩壊する。しかし、ロール表層部に残存するネットの強度低下は小さい(表1)。
2)ロールベール表層部のネットは、ロールの重ね合わせと堆積時に濃度10%程度の尿素液(約10L/ロール)を表面散布することで接触部の温度を高めるとともに長期間維持する(表2)。
3)一次発酵時で残存したネットは二次発酵時に、(1)高温発熱中の堆肥とサンドイッチ状に再堆積する方法と、(2)3回の切返しと添加剤およびビニール被覆の組み合わせで分解する方法がある。(1)は大量の高温発熱中の堆肥が必要である。
4)(2)の方法では発酵促進剤として米ぬか添加(6〜10kg/ロール)が有効で、発酵温度を無添加区より10℃以上高め、60℃以上の継続日数も大幅に増加させる。また、米ぬか添加は残存するネットの平均強度を低下させるとともに、手で簡単に切断できる(2kgf/本)ネットの割合を顕著に高める。なお、ビート糖廃液の希釈液(2%、6〜10L/ロール)添加は発酵の立ち上がりを迅速にするが、発酵温度を高める効果は小さい(表3)。
5)生産されたながいも茎葉ネット混合物の堆肥はC/N比が11程度で、コマツナの発芽率を抑制することはない。
[成果の活用面・留意点]
1)秋堀りながいもの茎葉を対象とする。本成果を適応することでつる切りを省略できる。
2)本技術で使用する機械類(ロールベーラー、サイレージカッター及び切返しのためのショベルローダー、バックホー等)は畑作農家が所有する農作業機では対応不可能な場合が多いので、地域のコントラクター等を積極的に活用することが望ましい。
3)一次発酵を抑制する要因として、(1)茎葉の水分が50%程度以下、(2)過水分によるロール内部の嫌気発酵(サイレージ化)がある。その対策として、前者には茎葉水分が多い黄変期から枯葉初期にロールベールを作成するか、加水する(200L/ロール程度)こと、後者にはサイレージカッターでロールを切断すること、が有効である。
平成16年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名及び区分
「高温の堆肥化熱を利用したながいも用生分解性ネットの分解促進技術」(普及推進)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:生分解性ネットを使用したながいも茎葉の堆肥化技術の組み立てと早急な普及
予算区分:国費補助(革新的農業技術導入促進事業)
研究期間:2002〜2004年
研究担当者:三木直倫、鳥越昌隆、田中静幸、竹腰曜通、犬塚秀一、湊 啓子(道立畜試)、磯野照弘(帯広市農業技術センター)
目次へ戻る