休閑緑肥導入による大規模畑作の生産力増強
[要約]
道内主要畑作地帯における休閑緑肥の乾物収量炭素量ベースで牛ふん堆肥2.5〜5t/10aに相当する。休閑緑肥導入で後作物は概ね増収するが、効果の持続性は2作目(上川)、3作目(十勝,網走)まで確認できる。増収の要因は緑肥の窒素肥効と作土層下部から心土上部の土壌硬度の低下が関与する。
[キーワード]
大規模畑作地帯、休閑緑肥、導入効果、土壌硬度、窒素肥効
[担当]十勝農試・北見農試・上川農試・技術体系化チーム
[連絡先]電話0155-62-2431
[区分]北海道農業・総合農業
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
十勝、網走、上川(士別)地域の主要畑作地帯では大規模化が進み、労働の季節的集中、省力作物への作付け偏重等による地力の低下や連作障害等の問題が発生している。これら問題に対処するため、大規模畑作経営体を対象に、休閑緑肥導入による自然循環機能を重視した農法への転換が畑作物の収量性、土壌環境に及ぼす影響を農家レベルで検証する。
[成果の内容・特徴]
1)休閑緑肥の乾物生産量は十勝550〜1050kg/10a、網走860kg/10a前後(株部も含む)、上川(士別)450〜630kg/10a程度で、炭素量ベースで牛ふん堆肥2.5〜5t/10aに相当する。
2)休閑緑肥導入後の作物収量に及ぼす効果は、(1)十勝で1作目秋まき小麦>3作目ばれいしょ,豆類>2作目てんさい、(2)網走で3作目ばれいしょ>2作目てんさい>1作目秋まき小麦、(3)上川(士別)で1作目秋まき小麦>2作目てんさい、である。また、効果の持続性は、(1)十勝、網走で概ね3作目、(2)上川(士別)で概ね2作目まで、と推定できる(表1)。
3)熱水抽出性窒素は十勝,上川(士別)では導入後1作後までほぼ半数以上の圃場で高まる。また、十勝,網走では作土層下部および心土の土壌硬度が導入後2〜3作後まで半数以上の圃場で低下し(表2)、上川(士別)では導入後2作目の砕土性向上が図られる(聴き取り調査、データ省略)。
4)休閑緑肥導入で土壌硬度の低下程度が大きい(硬度の差)圃場では、導入後2,3作目のてんさい、ばれいしょおよび豆類が増収する(図1)。なお、網走のてんさいではC/N比の大きい緑肥鋤込みによる土壌窒素供給の改善効果も認められる。
5)鋤込まれる休閑緑肥の化学組成の影響が直接発現する1作目秋まき小麦に対しては、窒素施肥の留意点をまとめて表3に示す。
[成果の活用面・留意点]
1)休閑緑肥作物の導入に当たっては、今回の成果と既往の知見(北海道緑肥作物等栽培利用指針改訂版 北海道農政部編)とをあわせて活用する。
2)ひまわりはバーテシリウム抵抗性品種を用いる。
3)休閑緑肥導入後、1作目秋まき小麦−2作目てんさい−3,4作目ばれいしょ・豆類を作付けした場合の結果である。対照は休閑緑肥導入時に一般畑作物が作付けされている。
平成16年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名及び区分
大規模畑作における休閑緑肥導入が生産力に及ぼす影響と経営評価(普及推進)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:資源循環型農業確立支援事業:十勝農試−畑作における休閑緑肥導入による持続的畑作輪作技術の実証−、北見農試−網走管内美幌町,小清水町における実証事業−、上川農試−上川管内士別市における実証事業−
予算区分:国費補助(資源循環型農業確立支援事業)
研究期間:2000〜2004年
研究担当者:三木直倫,飯田修三,南 忠,中津智史,平石学,小野寺鶴将(以上十勝農試)、土屋俊雄,大久保利通,五十嵐龍夫,吉沢 晃,池谷 聡,野田智昭,西村 努,赤司和隆,美濃健一(以上北見農試)、宮森康雄,神野裕信,中辻敏朗,河野迪夫,渋谷幸平(以上上川農試)
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