乳牛ふん尿のバイオガスプラント消化液の特性と草地・畑地への施用法


[要約] [キーワード] [担当]北海道開土研・農業開発部・土壌保全研究室、道立根釧農試・研究部・草地環境科、道立北見農試・生産研究部・栽培環境科、道立畜試・環境草地部・畜産環境科
[連絡先]電話011-841-1754
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]技術・普及



[背景・ねらい] [成果の内容・特徴]
  1. 消化液は原料のスラリーよりも、メタン発酵によって、pHが高く、乾物が少なく、アンモニウム態窒素が多くなる。消化液の肥料成分含量はpH、EC、乾物含量(%)等によって推定できる(表1)。
  2. 乳牛ふん尿を主原料とする消化液中の重金属含量は肥料取締法の基準値(発酵汚泥肥料)を十分に下回る。衛生指標菌の腸球菌,大腸菌はメタン発酵(中温)過程でそれぞれ2、3オーダー減少し、その後の加熱処理(55℃・7.5hrまたは70℃・1hr)で腸球菌は<2log10MPN/g、大腸菌は不検出となる。中温発酵と加熱処理の組み合わせ、または、高温発酵処理により、エゾノギシギシ種子は発芽しなくなる。
  3. 消化液は原料スラリーよりも乾物含量が低く、地中に浸透しやすいので、施用後のアンモニア揮散量が少なく、夏期の5t施用時で原料スラリーで揮散率30%に対し、消化液で20%に止まる。消化液施用に伴うアンモニア揮散率は、揮散しやすい高温時でも、3〜5t/10aの施用量で、施用されたアンモニウム態窒素の10〜20%である(図1)。
  4. 草地では当該番草に対し、窒素0.4、リン酸0.4、カリウム0.8の肥効率によって、消化液を肥料に換算する。ただし、消化液のアンモニウム態窒素が全窒素の50%以上を占める場合、アンモニウム態窒素を化学肥料と同等と見なす評価法がより適切である(表2)。年間施用量4t/10aでは、秋(10月まで)と春(5月中旬まで)の等量分施が効果的である。
  5. 畑地では消化液の窒素肥効を全窒素またはアンモニウム態窒素で評価する。肥効率は作物および施用法別に表2のように設定される。窒素の肥効率を高めるには、秋まき小麦は起生期に施用し、それ以外の作物では基肥とし、施用後速やかに土壌と混和する。えん麦、シロカラシは消化液が付着すると枯死するため、基肥とする。カリウムの施肥標準量から判断した施用適量を作物別に設定した(表2)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本成果は乳牛ふん尿を主原料とした消化液について適用する。
  2. 重金属含量の高い副原料を投入する場合は、消化液の重金属含量を十分に監視する。
  3. 中温発酵の場合は、衛生管理や雑草種子対策上、加熱処理も付加することが望ましい。
  4. バイオガスプラントの各処理槽でアンモニア揮散、沈殿が生じないよう留意する。
  5. 畑地に対する施用法の試験結果は、地表面近くからの全面施用条件で得たものである。
[具体的データ] [その他]
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